作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名 : 交響曲 第1番 ニ長調 D.82 (1813) 演奏者 : ニコラウス・アーノンクール指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 CD番号 : TELDEC/WPCS11974 初詣で江ノ島に出かけ、帰りにいつもの天神山に行って帰った。ずいぶん歩いたなぁ…。良い天気だったけれど、江ノ島に渡る橋ではあまりに強い風に驚かされた。 さて、この曲。習作にしては良くできている。シューベルトが天才であることは分かっているが、その分量たるや凄まじいものであり、その質の高さがとんでもないということがよくわかる音楽である。 シューベルトの年少の頃の作品はほとんど失われたようで、15才前後になっていきなり成熟した作曲家として現れ、この曲を書いた15年後、いきなり天国に召されてしまうのである。 この一番を侮ってはならない。確かにテーマなどまだ後期(と言っても30そこそこで亡くなったシューベルトに晩年がどうとか、円熟がどうとかいうのは、私にはどうしてもピンと来ない言説であるので、後期というのが正しいと思うが、最後の交響曲と比べれば主題などはまだ単純で、ハイドンやモーツァルトの影響を色濃く残している。 また移行部などの音型がモーツァルトの交響曲に似ていたりして、ちょっとニヤリとしたりするけれど、そんなことなどどうでもよろしい。この作品が並の若者の音楽でないことだけははっきりしている。 私は、この曲の第1楽章の再現部が序奏からはじまるのはどう考えても間違っているように思う。シューベルトのスコアがそうであっても、当時の習慣からすればそれはないのではと思うが、どうなのだろう?マリナーのように最初の序奏ではゆったりと演奏しながら、再現の前ではテンポを速めるなどの工夫をしているのもあるけれど、私は単純にシューベルトの書き忘れだと思っている。そんな演奏はないのかなと思うけれど、みな後生大事に序奏から再現されているのはちょっと閉口だ。 しかし、このロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのシューベルトはアーノンクールの古典派からロマン派にかけてのベートーヴェン、ブラームス、シューベルトの交響曲全集、更に全部ではないけれどハイドン、モーツァルトなどの選集の中で、最もよく出来たセットモノの録音だと思う。 特に、初期交響曲の出来映えが素晴らしい。 つい最近、この曲をスウィトナーの演奏で聞く機会があった(yurikamomeさんのご厚意による)が、それも大変素晴らしかった。ブロムシュテットの全集ではドレスデン・シュターツカペレという天下の名器を使っての名演が聞けるし、私のお気に入りはギュンター・ヴァントの古い全集なのだが、他にもカラヤンのEMIへの全集やカール・ベームの歴史的名盤、クラウディオ・アバド、ネヴィル・マリナー、コリン・デイヴィスなどの録音を所持していて(他にもあるかも知れないが…憶えていない…)この録音は、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団という古典的な名器で録音しているところが特徴だろう。 1992年5月, 11月の録音ということだから、クレバースなどは退陣し、リッカルド・シャイーの時代となっていたはずで、ベルナルト・ハイティンク時代の音はすっかり失われている。意外にも伝統的なコンセルトヘボウ管の音は早くに失われたことを、今回このシューベルトで確認してしまった。 今ではすっかりつまらないオケになってしまった。上手いだけなら、他にいくらでもあるのだ。あの美しい音はどうも二度と戻らないようだ。残念なことである。
by Schweizer_Musik
| 2010-01-05 23:39
| CD試聴記
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