オルガンの録音について
スイスに限らず、ヨーロッパのどんな小さな町にも必ずと言って良いほど、教会がある。スイスでは一つの町に2つあったりして、それがプロテスタントとカトリックの教会だったりすることもある。
そして小さな村の教会であっても、大抵は立派なオルガンがあり、運が良ければそれを聞くことが出来る。演奏会でなくミサに参加すれば必ずそれはかなえられるし、大きな教会なら聖歌を聞くこともできる。もちろんグレゴリオ聖歌と呼ばれている古いカトリックの聖歌である。プロテスタントであれば、新しい民謡風の平易なメロディーだったりして、みんなで声を合わせたりする。
そしてその歌の伴奏にオルガンが使われていることも多い。
ヴィンタートゥーアの市教会にはコーラス用のメッツラーに小さなオルガンが、大オルガンの反対、すなわち内陣にあたるところに置かれていた。大オルガンは19世紀末のもので、現在クーン社がメンテナンスをしているもので、概ねソロ用である。このオルガンを使っての録音もいくつかあるが、アルテ・ノヴァから出ているリストのオルガン全集やサン=サーンスのオルガン全集でその響きを聞くことができる。一方、小さなオルガンの方を使ってのアンサンブルもまた美しい。
オルガンの多くは丁寧にメンテナンスを受けている。ジルバーマンによる18世紀の名器もある。バーゼル近郊のアーレスハイムは何と言うことのない町であるが、ここには古い大聖堂が残っていて、18世紀のこの名器が大切に保存され、演奏されている。ただ2005年の春に訪れた際には解体修理に付されていて、残念ながらその姿を見ることは出来なかったが、歴史的名器を大切にする姿勢には頭が下がる。
バーゼルはエラスムスが活躍した啓蒙主義の町である。だから比較的穏健な宗教改革が導入されたため、いくつかの教会でこうした歴史的なオルガンが廃棄されず残ったのではないかと思う。旧市街のリストとともにパリから逃れてきたダグー夫人が宿泊したという、ライン河岸のホテル・ドライ・ケーニゲ(「3人の王」の意でキリスト生誕の折りの東方の三博士を指す)から少し下流の方に広い道を歩いていったところのプレディガー教会には、アルプ・シュニットガーの名器も残っているのだ。
アーレスハイムのオルガンは大変有名で、ライオネル・ロッグの最初のバッハのオルガン全集でも使われたし、マリ=クレール・アランなど数多くの名オルガニストがこのオルガンを使って録音を残している。
プレディガー教会の方の録音も私はいくつか所持しているが、有名な大聖堂には新しいメッツラーの大オルガンが入っている。メッツラーはスイス・チューリッヒにある名ブランドだ。スイス各地でこの名前を見つけることができる。クーンやマティスといったオルガン・メーカーも素晴らしい楽器を数多く作ってスイス各地の教会やホールでその名を見つけることができる。
さて、こういうことを書いたのも、日本のCDでオルガンのCDは大変少ないが、その楽器について書かれた解説はほとんどなく、楽器というものを大切にしていないように思われるからだ。もちろん、演奏家の解釈、技量、その音楽性をまず味わうべきだが、決して持ち歩けないこのオルガンによって、音楽そのものも大きく変わってくることもあり、もっと注目してしかるべきだからだ。
日本にも多くの素晴らしいオルガン工房が存在する。そうしたところも含めて、音楽ファンはもっと注目してくれれば、オルガンによる音色の違い、響きの違いに注目することで、もっと楽しみが広がると思うのだが・・・。
いかがでしょう?
by Schweizer_Musik | 2005-04-01 20:35 | 原稿書きの合間に
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