キラールのピアノ協奏曲
作曲者 : KILAR, Wojciech 1932- ボーランド
曲名  : ピアノ協奏曲 (1997)
演奏者 : ヤヌス・オレイニクザーク(pf), ジェルジー・マクシミウク指揮 シンフォニア・ヴァルソヴィア
CD番号 : BeArTon/CDB020

1992年の映画「ドラキュラ」の音楽を担当したことでも知られるポーランドの作曲家キラールであるが、作曲家としてはミニマルの系列に属する。この曲は冒頭から美しい響きで始まるが、そのフレーズが何十回とくり返され、一種のトランス状態に向かうのである。人気作曲家の久石譲氏もこの系列に属していて、高尚な身振りのポップカルチャーというところか。
グレツキの「悲歌のシンフォニー」を明るくして、ソプラノ・ソロを外してピアノ・ソロをいれるとこんな感じになる。柔らかな歌い出しの第2楽章はそれでもやはり美しい。およそ現代音楽らしくない世界であるが、これが脱前衛の落としどころだったのでは?と思うこともある。
しかし、私にはやや安直に感じられる。ポップカルチャーであるミニマルに軸足を置いていることで、音楽が薄っぺらいものになっていると思うからだ。かつてこれを聞いた時はとても新しさを感じたし、これが新しい時代のあり方のように思ったものだが、「新しい」ものはすぐに古びてしまい、陳腐化する。
魅力を感じつつも、私は時の流れの残酷さと、いつの時代でも普遍的に感銘を与え続けられる音楽とは?と自問自答する。古い聖歌の一部やらを作品の中に引用するのは、その音楽のもつ普遍性の無さを作者自らが気がついていたからか?そうだとしたら更に残酷な感じがする。
色々と考えさせられる音楽である。
by Schweizer_Musik | 2010-01-13 03:00 | CD試聴記
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