作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名 : 歌曲集「冬の旅」D.911 (1827) (W.ミュラー詩) 演奏者 : ハンス・ホッター(br), エリック・ヴェルバ(pf) CD番号 : Grammophon/POCG-3037 実家で見つけたCD…。一度聞いただけで、そのまま棚の中で眠っていたもの。自分のこの曲の解釈とあまりにかけ離れたものだったので、つい関心をもてないままにそうなったのだが、今聞き直してみて、これはこれでやはり希代の名歌手の描いたかけがえのない「冬の旅」の世界だと思った。だが、あまりに老齢を連想させるのがやはりバスではこの歌は無理という私の考えを補強することともなった。 ドゥコピルとの東京文化会館でのライブ盤よりも、私はこちらの方が良いと思うが、それでもここにいるのは壮年を過ぎた一人の男(歌っているのが男声なので…)の死を見つめた旅なのである。それはあまりにリアリティがありすぎて、この曲がわずか30才になったばかりの若者の世界観が欠落しているように思われる。 エルンスト・ヘフリガーの若々しい(それでいてさすがにベテランらしい配慮の行き届いた)名唱の、夢見がちな絶望と挫折、そして死への憧れが透徹した抒情の中に歌い上げられるのに対して、ハンス・ホッターの歌は深く、人生の長い旅路への思いが投影した、重く、リアリティのある歌となっている。 バスの声域に合わせるために、当然オリジナルの調性から移調されているが、おかげで重く、暗い響きとなってしまい、冒頭の「お休み」が、「御出棺!」と言われているようで、気色が良くない。 トボトボと歩く方が、良いというより、私はさすらいへの憧れと、死を友とするような無邪気さがこの冒頭の和音の連打にあると思う。その点で、快活である必要はないが、必要以上に重くなるのは考え物だと私は考える。「風見の旗」だって、凍り付いて動かないみたいで、こうした問題を抱えつつも、このホッターの歌が支持されてきたのは、人生の全てを俯瞰するかのような、広大な世界観を感じさせるその声にあるのだと思う。 「春の夢」の優しさと厳しさの厳しい対比は、劇的にしようと思えば簡単だが、そういうあざとさとはホッターは無縁である。この歌と有名過ぎるほど有名な「菩提樹」におけるホッターの格調高い演唱は、他の追随を許さない高みにある。 しかし、一方で最後の「ライヤーまわし」など、冥界から響いてくるようで、やはりリアリティがありすぎる。私は苦しみは続くとか、絶望を…とか言うよりももっと希望と苦しみからのカタルシスのようなものが、どこかに込められていないと…と思う。 以上、私の極めて偏見に満ちた私見による感想の域を出ない、全くの暴言に近いものであるが、この曲についての意見と、ホッターの歌についての感想を述べてみた。もう二時だ。そろそろ寝よう!随分夜更かしをしてしまった…。 写真はミューレンの定宿、ベルビュー・クリスタルの前の風景。雨の日はこんな感じになるけれど、また雨も良しである。 ![]()
by Schweizer_Musik
| 2010-02-23 23:00
| CD試聴記
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