作曲者 : MOZART, Wolfgang Amadeus 1756-1791 オーストリア
曲名 : ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調「戴冠式」K.537 (1788) 演奏者 : フリードリヒ・グルダ(pf), ニコラウス・アーノンクール指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 CD番号 : TELDEC/8.42970 ZK 現在朝の5時半。いつもの時間に起き出して、気付けに一曲聞いている。年末に帰郷した時は寒くて寒くて…だったが、まだ2月だというのにこの暖かさは一体どうなっているのだろう。ストーブがいらないなんて、ちょっと考えられない暖かさである。 さて今朝の曲は、モーツァルトの「戴冠式」。フリードリヒ・グルダとニコラウス・アーノンクールのあの超名演である。こんなに美しい演奏が記録されたということ自体、何だか夢の中の出来事のような気分になってくる。余裕綽々でオケの部分にもサラリと通奏低音のような即興を紛れ込ませているのが、また素晴らしく音楽的!彼の古いモーツァルトの協奏曲録音でもこんなことやっていたけれど、こんなに音楽的だったかしら? アーノンクールの指揮はどこをとっても極端なことはないが、奏者の数をピアノと絡んでオブリガートを弾く時はソロ、もしくはファースト・デスク・オンリーにするなど、響きの厚みを細かく調整していて、さすが一筋縄ではいかないしたたかさを感じる。 これが美しく決まるのも天下の銘機ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団だからだろう。1983年の録音とあるから、まだクレバースは在籍していたのでは…。実家ではインターネットに繋がらないのでこまかなことは確認できないが、オロフかクレバースの時代であることは違いなさそうだ。 カデンツァは多分グルダ自身によるものだと思うが、スタイルはちゃんと古典の枠におさまっていて、良い感じだ。下手に現代風にしたり、あの頃、ちょっと流行ったことがあるけれど、そんな愚をグルダほどの人がやるわけがない…。 第2楽章は私もちょっとだけ弾いたことがあるけれど、弾いていてこんなに幸福で美しい音楽ってあるのだろうかと思ったものである。オケを指揮しながら(というよりオケに勝手にやってもらって、思い出した時だけキューを出すというもの…指揮とは言わないな、これは!)やったものだが、ついついピアノのパートに夢中になってしまったものだ。グルダの歌入り。プロデューサーはおいおいやっちゃったよ…なんて思ったのでは?でも夢中にさせる音なんだ。こんな美しい音楽を弾いて、冷静である奴なんて反対にどうかしている。没入しているグルダこそ、モーツァルトを真に理解し歌い上げる弾き手なのだ。 しかし、なんということのないスコアなのに、どうしてこんなにきれいなのだろう!!私のようにゴチャゴチャ書き上げている者には、もう溜息しか出てこない。天才と凡人の差を痛感させられる。そりゃそうだ! 終楽章の軽やかな歌い廻しはもう絶品。久しく聞いていなかったが、やはりこれは名演中の名演だ。昔々、ヘブラーがコリン・デイヴィスと組んで録音したものが廉価盤で出ていて、それを厭きることなく聞いたものだが、ヘブラーのピアノが私には一本調子に聞こえて今ひとつだった。評論家(U野氏である…)の評価は高かったけれど、私はオケが良いと思ったけれど、ピアノは素直な音で良いけれど、そんなに激賞するほどではないなと思っていた。はじめてこの曲を聞いて10年ほど経ってこの演奏に出会って、この曲はこう弾くものとやっと理想の演奏に巡り合えたと思ったものだ。 久しぶりに聞いて、この美しい世界を心から満喫した。皆が知る大名演なので、今更書かなくてもと思ったけれど、やっぱり良いので書いてしまった。これを聞いたことがないなどという方はぜひ一度お聞きになることをお薦めしたい。ああ気分が良い。 写真はヴェーゼンドンク邸の裏にあるワーグナーが住んだ家のあったところに建つそれにしき家…。今はヴェーゼンドンク邸(現在はリトベルク博物館となっている)に働く方の住居(確か社宅だったと思う…)になっているそうだ。ああ一度でいいから住んでみたい…(笑) これが音楽の都として観光に力を入れているウィーンなどでは、精一杯説明書きやら、市内音楽地図みたいなものを出して宣伝しているだろうに、チューリッヒは全く素っ気ないものである。
by Schweizer_Musik
| 2010-02-26 08:00
| CD試聴記
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