故若杉 弘氏指揮ベートーヴェンの交響曲 第7番
作曲者 : Ludwig van Beethoven
曲名  : 交響曲 第7番 イ長調 Op.92 (1811-12)
演奏者 : 若杉 弘指揮(&唸り声) 東京フィルハーモニー交響楽団
CD番号 : TOWER RECORDS/TPTW-1004

yurokamomeさんのご厚意により聞くことができた演奏。久しぶりというか、若杉 弘さんのベートーヴェンってこんなだったのかと思い、感動した。ライブらしく、三点ではなく、かなり指揮者に近接したマイクで録音したらしく、若杉氏の唸り声がかなり入っている。それもピアニシモでとてもよく聞こえるので、ちょっとグレン・グールドを聞いているみたいだった(笑)。
しかし、古いフルトヴェングラーの録音のようなはじまりに驚いた。そしてその後も…。深いブレスで振り下ろしたタクトはきっとブルブル震えて打点がはっきりしなかったに違いない。ズレズレのトゥッティが冒頭で鳴る。面食らったオケは必死でまとまろうとし、若杉氏がそれを突き放す。緊張の瞬間が続いて次第に皆がテンポをとらえ始めて音楽が流れ始める。
音楽に合わせてテンポが頻繁に変わるのも特徴だろう。アチェレランドやリタルダントのように誰でもわかる変化はそれほど多くないけれど、場面転換でサッとギアを入れ替える辺りはプロ!そのものだ。
それにしても深いブレスと「タメ」である。音楽の重心は低く、躍動感というより重量感の方がずっと全面に出ているが、それが巨大なスケールを顕している。フルトヴェングラーのようだというのはこの点である。
さすがに終楽章は若干グダグダなはじまりで、もっと締まった演奏であるべきと思われる。歌はどこからも聞こえてくる(オーケストラと若杉氏の…)。だから極めて音楽的なのだけれど、ちょっと曲の求めているものからすると終楽章(と第3楽章)は今ひとつの出来と言えばいいのだろうか?
それにしてもあの東フィルからこんな音を引き出したとは!もっと聞いておくべきだったと悔やまれてならない。ともかく聞かせて下さったyurikamomeさんに感謝!!

写真はチューリッヒの船着き場から歌劇場のその向こうに見えるアルプスを撮った一枚。遠くに見える白銀の山は、冬などの空気が特に澄んでいる頃にはとてもよく見えて美しい。夏はあまりよく見えず、私はまだ夏では経験していないが、今の季節ならまだ見えていることだろう。
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by Schweizer_Musik | 2010-03-08 09:33 | CD試聴記
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