フリッチャイで聞くロッシーニのスターバト・マーテル
作曲者 : ROSSINI, Gioacchino 1792-1868 伊
曲名  : スターバト・マーテル (1841)
演奏者 : フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリンRIAS交響楽団, 聖ヘドウィッヒ大聖堂聖歌隊, RIAS室内合唱団, マリア・シュターダー(sop), マリアンナ・ラデフ(sop), エルンスト・ヘフリガー(ten), キム・ボルイ(bs)
CD番号 : Grammophon/POCG-3348

これが今も手に入ることを心から希望する。何故ならモノラルながら残されたことを感謝したくなるほどの超名演だからである。豪華極まりない歌手たちに加え、素晴らしい合唱、そしてフリッチャイの指揮。これ以上の演奏が可能だろうか?
オペラのようなノリの良いメロディーを彼らだからこそ品格を保ち、聖母マリアの嘆きが深い祈りの心へと昇華したのである。
ケルテス盤やジュリーニ盤、あるいは最近惜しくも亡くなられたヒッコクス盤など名演があるが、総合点でこの演奏には及ばない。これがモノラルだということを加味してもだ。
新しいものの中ではヒッコクス盤が最も私のこの作品へのイメージに近いものだったが、指揮の踏み込みがフリッチャイに比べるとあと一歩足りないように思う。これでも充分という思いもあるが…。
一方、ジュリーニ盤は歌手をたてるあまり、オケの響きが痩せすぎてしまう傾向があるし、歌手もフリッチャイ盤に及ばず。ヒコックス盤もソリストの出来映えが普通に言えば大変立派とは言え、シュターダー、ヘフリガーなどに比べればやはり劣る。
ああ、フリッチャイ盤がステレオだったら、最新のデジタル録音だったら…などと嘆いてみてもむなしいだけだけれど、そう思わざるを得ないほど素晴らしい演奏だ。
1829年に完成した「ウィリアム・テル」以後、ロッシーニは第二の人生としてシェフの道に入り(言い過ぎかな?実際には38才にして年金生活に入り…の方が正しいかも…)、ごくわずかの例外として宗教曲と手すさびのようなピアノ曲や歌を書いただけで、音楽からは引退してしまった。
しかし、この音楽を聞いて、その引退を惜しむ気持ちは誰もが抱くのではないだろうか?スターバト・マーテルにしてはオペラチックでありすぎるとして非難されたりもしたようだが、今日ではそれがかえってこの作品の魅力となっていることが評価されている。
ソロの伴奏の書き方など、全く歌劇のアリアであり、彼からヴェルディへとイタリア・オペラが繋がって行ったことをこの作品を通じて私は実感することができた。
そしてこの名演で聞けることをフリッチャイと演奏家たちに心から感謝!!
さて昨日はチャイコフスキーの四季から「四月」の編曲が終わった。段々チャイコフスキーの音に色々と私の音を加え始めている。最後の頃には自分の曲になってはしないかと、今から心配しているが、今日は「五月」を編曲する予定。のんびりあくせくする必要もないので、春めくのを楽しみにして外の寒そうな冬枯れの景色を恨めしげに見ている今朝の私である。
そろそろ仕事にかかろう。
写真はスイスはムーリにある修道院。
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二枚目はその付属教会の中。ここを紹介した日本語のガイドブックはまだ見たことがないけれど、スイスでは結構有名なところ。
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ついでに教会の入り口あたりの写真もつけておこう。
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追記
ついでながらこのベネディクト派の修道院教会はご覧のとおり古いオルガンが三台設置されていて、それぞれを録音したCDを偶然手にとってから、何とか一度見てみたいと思って行ったもの。
スイスのピアニスト津田さんのご主人の指揮者であるシュヴァイツェル氏に話をするとよくご存知で、行ったことがあると言われていた。
子供の社会見学のようなもので行くとか聞いた気がするが、この村にはこの教会しか見所がないので、アルプスとハイジの世界しか興味がない人には、紹介しても無駄なのかもしれない。でも心ある方はぜひ一度行かれてみることをお薦めしたい。アールガウ州にあり、Wikiにも記載がある。但し英語→こちら
ハプスブルク(この有名なオーストリアの王家は元々この近くがルーツであり、ハプスブルクのご先祖が作ったお城が残っている)の時代に(スイス建国の頃の話らしい)創建された、もの凄く古いもの。そして宗教改革の時代にも生き残り、その姿を今日に伝えているのである。
大変貴重な古文書も多くあるそうだが、こうしたことは私の専門外なので、聞きかじりで書く勇気がないので、この位にしておく。ともかく、ヨーロッパでは大変有名な修道院だそうだ。(私は行ってからそれを知った…)
by Schweizer_Musik | 2010-03-10 08:20 | CD試聴記
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