ディヌ・リパッティの「ツィガーヌ」
作曲者 : LIPATTI, Dinu 1917-1950 ルーマニア → スイス
曲名  : 管弦楽のための組曲「ツィガーヌ "Tzigane"」(1934)
演奏者 : エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団
CD番号 : archiphon/ARC-112/113

Wikiでラヴェルのツィガーヌを調べていたら、同じところにリパッティの「ツィガーヌ」についての言及があり、それが「当時の作曲界における流行を模倣した二番煎じ的なもの」とバッサリ。誰が書かれたかは存じ上げないが、余程、音楽に精通された立派であろう方が、思い切った結論を書かれているのを目にしてしまい、それに刺激され、眠っていたCDを取り出して聞いてみることにした次第。
リパッティの作曲家としての時間はあまりに短かったし、演奏家としての時間を多く割かねばならなかったことも考慮しなくてはならないが、それでもそのクオリティを云々するのに、二番煎じとああいう場所で断じる勇気は、私にはとてもない。それは、彼の作品のクオリティのあまりの高さ故でもあるが…。
ついでながら、その短く触れられた文章にはは「。印象主義音楽の新しい響きを僅かに採り入れながらも、大部分は新古典主義音楽の潮流に乗った軽やかな作風」とある。へぇ、そうだったんだと勉強になる。確かにアルベール・ルーセルやナディア・ブーランジェの元で学んだ彼が、印象派のドビュッシーなどの音楽に触れる機会は多かったが、この二人は印象派の作曲法を教えていたわけではなく、私にはリパッティの作品から印象主義音楽の新しい響きやらは聞こえず、多調性、ポリコードなどの新古典主義の技法に、モードを組み合わせた音が聞こえてくる。
第3楽章で、細かなフレーズをピアノと弦でやりとりすあたりは、確かにショスタコーヴィチあたりにあった気がするけれど、味わいは更に洒脱で、この曲独特のトッカータ風の優れた部分だと思う。
この録音はリパッティが亡くなって翌年に行われた演奏会のライブである。盟友であったアンセルメが指揮してのコンサートで、録音も当時のものとしてはまずまずの水準に達していて、機会があれば一度お聞きになられることをお薦めしたい。私には下手な「二番煎じ」(…この言葉も大嫌いだ。二番煎じのどこが悪いのか!良い音楽であるかどうかの基準がこれならば、古典派以前の音楽は全て聞くに値しないことになる。著作権協会の方なのだろうか?爆)というか、学生の習作のような作品には到底聞こえない。第一級の作品だと思う。
リパッティが実際に演奏した「古典的な様式によるピアノと室内オーケストラのためのコンチェルティーノ Op.3」(1936)は、更に古典的な様式で書かれていて、ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」の世界を協奏作品でやった優れた実例だと思う。こちらは1943年にベルリンで録音されたものが残されていて、あの時代によくぞ…と思う。戦中のドイツで演奏したからと言って、彼はナチスではなかったが。当たり前のことだが、戦争中にドイツで演奏しただけでそういう人がいるのは更に困ったものだ…。

このアンセルメの演奏を聞く限り、ラヴェルのツィガーヌの項目で「二流の取るに足らないものだ」とわざわざ書き立てる必要があったのかどうか、どうしても私には理解できない。
オーケストレーションもピアノをオーケストラの一楽器としてピツィカートと合わせてみたり、独奏的というほどのものではないにしても、実に優れた技術をもっていて、大変良く書けている。
彼が無調に向かえなかったと非難する言辞も、他で見かけたことがあるが、無調かどうかが良い作品になるかどうかの基準ではないので、的外れもここまで来ると反論する気にもならない。
ネットにある情報は玉石混淆ということなのだろう。偏りの無い耳で、音楽を真正面から聞いてそれがどういうものなのか、個々が判断すべきで、その感想はそれぞれのものであり、ブログで感想を披露するのと、普遍性を持つかのような言辞をWikiのようなところに書くこととはちょっと違っていると思うのたが、私は間違っているのだろうか?
Wikiには私もいくつか投稿しているし、あまりに酷い時には書き直したりもしている。(アンセルメについてなどは、もうバカバカしくてWikiは駄目だなぁと思ったものだ)
だから、私が書き直してみようかとも思ったが、ことは作曲家の評価の問題であり、世間の評価がこういうことなのかと暗澹たる重いにかられ、なんだか情けなくなって止めてしまった。

写真はヴァーレンシュタットの湖の風景。この風景を孤独の中で見つめたリストとダグー夫人。当時とほとんどこの風景は変わっていないことだろう。
明日は早朝から上福岡までオケの本番を聞きに出かける。昨年末に取り組んだワルツやポルカのアレンジが本番の日を迎えるので、おつきあい…。今回は打ち上げは嫌な奴がいるので参加せずに帰る予定。リハは一度も聞いていないが、ゲネプロぐらいは義理を果たさねばと思った次第。
またいくつか教え子たちにやらせたので、彼らにも聞かせなくてはということで、付き合うこととした。しかし、遠い!!明日は7時には出なくては!!
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by Schweizer_Musik | 2010-03-20 21:42 | CD試聴記
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