ドラティ指揮で聞くスメタナの「わが祖国」
作曲者 : SMETANA, Bedřich 1824-1884 ボヘミア
曲名  : 連作交響詩「わが祖国」
演奏者 : アンタル・ドラティ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
CD番号 : PHILIPS/UCCP-7084

このCDは、昨日AMAZONに注文を出して今朝品物が届いたもの。なんて便利に時代なのだろう!!千円で送料タダだから、下手にiTune−Storeでダウンロードするよりもずっと安く済む。
でも音楽は安っぽいことなんてない。全盛期のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の奏でる響きは素晴らしい!!この響きも、シェフがハイティンクからリッカルド・シャイーに交代してガラリと変わってしまった。二流扱いをするまでには至らないものの、私にはかつての美しい響きは永遠に失われたように思われる。まるでどこかの神奈川フィルみたいである。シェフが無能だとまでは言わないけれど…。
この録音は1986年だからオケはまさに絶頂期。それがこの曲を得意とするドラティが指揮をしているのだから、悪いわけがない。モノラル期に同じ組み合わせで同曲をPHILIPSに録音していて、およそ30年ぶりの再録音だったという。
それにしても音楽的で実に美しい演奏だ。第1曲冒頭の二台のハープによるカデンツァもこれほど美しいものは少ないのではないか?最初に聞いたのが古いヴァーツラフ・ターリヒの録音だった(と思う…)。以来、ノイマン、スメターチェクの録音などを愛聴してきた私は、どうもチェコ・フィルという「本場物」という言葉に翻弄されていたような気がしている。
この連作は、背景のモティーフが統一された極めて大きな構想のもとに書かれたスメタナの傑作である。このハープが奏でる「吟遊詩人ルミールのハープ」のテーマは、全曲に循環主題のように散りばめられている。中世ボヘミア王国の城でルミールが歌う英雄や愛の物語がどんなものか想像しながら1曲目の「高い城」を聞き終えると、モルダウの流れが最初の一滴から次第に大河の様相を呈するまでの成長していく様を描写する。
続く「シャールカ」はフィビヒが歌劇化した女傑シャールカのおぞましい(男の裏切りに怒ったシャールカが全男性への復讐を誓ってしまう)理不尽な話であるが、音楽で聞いているだけなら我々男性も小さくならずに済む…(笑)。ルミールの動機が変化して第一主題が出来ていて、この勇壮な音楽もルミールが語るボヘミアの古い物語なのだとわかる。
第4曲の「ボヘミアの森と草原から」はこの曲の中で最も好きな作品で、冒頭のテーマは強く印象に残る。「3+1」のフレーズが冒頭で出てくるが、和音の進行がそのままルミールの主題と同じで、ちょっとドキッとする。更にこのテーマが三倍のリズムに拡大されてクラリネットに出てきて新しい主題として提示されたり、冒頭の主題にこだわりまくったスメタナの作曲スタイルの一端がかいま見えるような曲になっている。
このあたりの面白さを感じさせてくれる演奏でないとやはりつまらない。続くポリフォニックな展開はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のアンサンブルの良さが極めて強い説得力を持って迫る。
第5曲の「ターボル」はドヴォルザークの「フス教徒」のようなテーマの曲で、聖書をボヘミアの言葉に翻訳したことで異端とされ、ローマ法王から破門された上、スイスとドイツの国境にあるボーデン湖畔の街、コンスタンツの広場で火炙りの刑となったヤン・フスの遺志を受け継いだタボール派の戦いを描いているからである。
フス教徒の賛美歌などが歌い込まれたスコアが書かれた1878年から90年あまり経った1968懲年にソ連によるプラハ侵攻(俗に言うプラハの春事件)とそれに抗議するカレル・フサの「プラハ1968年のための音楽」にもそれは使われ、民族の誇りの象徴としても使われているものである。
第6曲は「ブラニーク」。ブラニーク山に眠る英雄たちの物語が描かれる。冒頭からかなり勇壮な音楽が流れるのはそのためである。
ドラティと天下の名器ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団はこのロマンあふれる物語を真っ正面から描ききっていると思う。ボヘミアの誇りのような曲だから、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団などの演奏を無視するのはどうかと思うが、今朝届いたこの演奏は誠に見事。最近聞いて良かったのでは他にデイヴィス指揮ロンドン交響楽団のものがあるが、このあたりはこの作品を愛するならば必携だろうと思う。

写真は私にとってのスイスの聖地、ソーリオ第2弾。背景のシオーラの山並みにピッツ・パディーレはアルプスの画家セガンティーニの絵のテーマになったものである。
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by Schweizer_Musik | 2010-04-11 17:16 | CD試聴記
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