フェラスが弾くブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」
作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独
曲名  : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調「雨の歌」Op.78 (1878-79)
演奏者 : クリスティアン・フェラス(vn), ピエール・バルビゼ(pf)
CD番号 : Brilliant/93791

フェラスのグラモフォンへのレコーディングの多くは1960年代後半に行われたが、カラヤンと共演した何枚かの協奏曲録音以外は、ちょっと復刻されたもののすぐに廃盤になり、入手が困難になったままであるが、これがBrilliantのバジェット・ボックス(格安箱物)になって復活しているのはうれしいことである。
シューマンのソナタなんてもう二度と聞けないかと、買いそびれてしまったことをずいぶん後悔していたので、ブリリアント盤は即購入と相成った。
で、このCDには名演も多いのだが、やはり颯爽としているという点ではEMIなどの1960年代前半までのものの方が輝きに満ちた演奏が聞けるように思う。
しかし、その中でもこのブラームスのソナタ第1番は特に美しく、フェラスの調子もすいぶん良いようで感動をさそう名演だ。
何しろ、彼を支えるピアノの共演がまた素晴らしいのだ。バルビゼはソリストとしても素晴らしいピアニストであるが、室内楽奏者としても超一流の素晴らしいピアニストであったことがよくわかる。
終楽章の冒頭などの五月蠅くならず、ヴァイオリンをたてながら降りしきる雨音を悲しげに歌い上げるのをやさしく支えるのである。歌ならばそれほど難しくないことでも相手が器楽となれば、メロディーと伴奏が同じ音域でぶつかり合うのはバランス的に実に厳しいのだが、あえてそれをブラームスが書いているのは、それでも支障のない演奏を求めていたからに他ならず、このピアノ・バートによほどの自信を持っていたからだと思う。
そしてそれが正しいことをバルビゼは証明している。
グリュミオーとシェベックの名演と並んで、私のファースト・チョイスの演奏である。

写真はチューリッヒ湖畔のリュシリコンの村。自作の詩に曲をつけろなどと五月蠅くつきまとうヴェーゼンドンク夫人などから逃れるために、ブラームスはチューリッヒから少し離れた此村に滞在し、交響曲第1番などの作曲をしたのだった。ガイド・ブックにはどこにも書いていない情報ですよ…(笑)。
フェラスが弾くブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」_c0042908_073825.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-04-18 00:07 | CD試聴記
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