アバドのマーラーの第9
作曲者 : MAHLER, Gustav 1860-1911 オーストリア
曲名  : 交響曲 第9番 ニ長調 (1908-09)
演奏者 : クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 :

アバドのこだわりの一曲である。この曲を三度も録音した人は他にいるのかな?と考えてみても、ちょっと思いつかない。今年のルツェルン音楽祭での演奏もどうも録音されるようだから、実現すれば四回ということになる。20世紀に書かれたこの作品が、これほどまでの人気を得るとは、天国のマーラーも喜んでいることであろうが、こんな深刻で重い音楽を、これまたこんなに気楽に聞いてしまって良いのかと、ちょっと自分でも後ろめたい気になっている。
アバドの正規録音は全て持っているが、最初のウィーン・フィルとの録音は以前に ITuneで激安だった時にダウンロードしたもので、一週間ほどかけてずいぶん楽しませて頂いたが、トラックを細かく切ってあって(第1楽章が9トラック…)そこを越える度に一瞬ドロップアウトするという不幸が重なり、以来滅多に聞かなくなってしまった。
このベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との1999年の録音は、胃癌の手術の前年ということで2002年にベルリン・フィルを退任する少し前の録音ということになる。
弦の配置がウィーン・フィルと違うなど、細かなところは幾分違いはあるけれど、私はそれほど本質的な違いとは思っていない。それよりもライブでそれこそギリギリの演奏をしているベルリン・フィルの驚異的な集中力と気力の充実しきったクラウディオ・アバドの指揮に、ある意味で一期一会のような真剣勝負の風情が感じられ、圧倒されてしまった。
ちょっと前にワルターの演奏を聞いたばかりなのに、またまたこの曲をとりあげてしまった。余程好きなのですねと言われそうだ。確かに好きだけれど、こんなに再々聞くような音楽ではない…。

この曲でつまらない演奏をするのは不可能だろう。どうやっても感動的な音楽になってしまうし、少々の演奏でも聞き始めたらもう呪縛にがんじがらめに捕らわれてしまったようにひたすら聞き進むしかない。そしてフェルマータのかかった第2ヴァイオリンとヴィオラとチェロの全音符が消え去るのに耳を澄ますのである。ハイティンクの古い録音もなかなか素晴らしかったし、バルビローリとベルリン・フィル、バーンスタインの3つの正規録音、そしてカラヤン…といったベタベタの有名録音もさることながら、ジュリーニのグラモフォン盤やクーベリックの全集盤など、この曲の名演を思い浮かべていると、次から次へと出てきてしまう。
しかし、今、どれを買えば良いかと問われれば、クラウディオ・アバドとベルリン・フィルのこの録音をお聞きなさいときっと薦めることだろう。2004年のマーラー・チェンバーとのDVDを今度また見てみよう。でももうしばらくはマーラーの第9を聞くのは止めておかなくては…。体力を消耗するから。
今年のルツェルンで彼がどんな演奏をしてくれるのか…今から楽しみなことである。

写真はモルゲンロートに輝くスイス最高峰のドーム。
アバドのマーラーの第9_c0042908_15505086.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-04-20 15:51 | CD試聴記
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