ニーノ・ロータ/作品集 ****(推薦)
ニーノ・ロータの作品を集めたリッカルド・ムーティの一枚。実はムーティの中で一番好きなCDなのだ。他は?それは止めておこう。
ロータはイタリアの作曲家で映画「ロメオとジュリエット」の音楽をはじめとして「ジェルソミーナ」で有名な「道」などの映画音楽の作曲家として有名だが、オラトリオなどの声楽作品をはじめとして幅広い作品を残している。中でも「弦楽のための協奏曲」などは、スタンダードなレパートリーとしてよく取り上げられているし、録音も多い。
魅力は何と言っても、現代音楽さっぽくないのに、独特のサウンドを持っていて更にメロディアスで親しみやすいところであろう。時にはストラヴィンスキーばりの変拍子も登場するが、
このCDでも映画「道」の中から作られたバレエ組曲が最初に収められているが、トランペットのソロが使われていてそれが大変効果的。特に有名なジェルソミーナのメロディーが無伴奏のトランペットで出てくる終楽章は独特で、感傷的な音楽ではないとわかる。意外と聴き応えがあるし、リッカルド・ムーティの指揮するスカラ座フィルハーモニーはなかなか優秀だ。ヴァイオリン・ソロをとっているステファノ・パグリアーノもスタイルによく順応して美しい演奏を聞かせている。
弦楽のための協奏曲は最近、チューリッヒ交響楽団のライブ録音を聞いたばかりで、それがいずれ購入可能になることを祈りつつも、この弦楽のためのムーティの録音を聞いて、改めてこの作品が傑作であることを確信した。
第1楽章はテンポはもう少しだけ速いほうが良いのだが、ムーティのは落ちすぎていてまとまりすぎた印象がある。Allegro
に入ってのユニゾンの力感も物足りないということはないものの、彼ならばもっとやれるのではと思ってしまう。これはそのチューリッヒ交響楽団の演奏が鮮やかであったために、どうもムーティの演奏が平板に聞こえてしまうのだ。(逆に言えば、シュヴァイツァーの指揮するチューリッヒ交響楽団のこの作品の演奏はそれほど良かったということになる)
第2楽章はスケルツォとあるが、決して速くないテンポが指示されている。ムーティもそれは意識しているようである。ダニエル・シュヴァイツァーの指揮が活力溢れる即興性に重点をおいたものとすれば、ムーティはまとまりを意識したもので、オケはわずかにスカラ座のオケの方が上か。しかし、こちらはスタジオ録音であり、その点を考慮すれば決して差は感じない。
歌に溢れているのは、意外にもシュヴァイツァーの方。ムーティはちょっと安全運転しすぎ。しかし、多くの演奏で受ける強引な感じはなく、安心して聞ける良さはある。
第3楽章のエアはムーティの演奏が上。弦の安定感はこちらがはるかに良い。ヴァイオリン・ソロはチューリッヒの方はツィマンスキーであるが、こちらの方が魅力的である。パグリアーノのソロは大変美しいのだが、やや線が細すぎて、弦楽アンサンブルの中では印象が薄い。
終楽章はかなり快速にとばしているが、これはこれでなかなか良い。もう少し落ち着いたテンポの方が私は好きだが、この活力あふれる演奏もまたムーティらしくて良い。
弦楽のための協奏曲ではチューリッヒ交響楽団のライブの聞きくらべてしまったが、彼らのライブ録音がネットで購入できるようになれば、私の感じていることがわかってもらえるのだが・・・。
さて最後には映画「山猫」の音楽から舞踊音楽を集めた組曲が演奏されている。サロン音楽風の作品群で、この作品でロータの芸術をどうこう言うことは出来ないが、ポピュラリティ溢れるロータの音楽の魅力が存分に楽しめる作品と言えよう。第一曲などシュトラウス風のメロディー作りのワルツで、作曲者をふせて「誰の曲か?」と当てさせて正解を言える人が、果たして何人いることだろう。
というわけで、ムーティの演奏はこの作品については万全である。まぁ難しいところもほとんどないこともある。

ムーティとスカラ座がまだ今日のように険悪でなかった時代の話だ。しかし、この音楽家たちがデモまでしてムーティを追い出したのだ。果たしてその重いツケをスカラ座の音楽家たちはどうやって払うのだろう。私は今後はスカラ座の録音は買わない。ムーティに義理立てする気はないが、だからと言ってこういう傷を負ってしまった以上、音楽は死んでしまったも同然に思われるからだ。
ロータの「道」の終曲での悲しい音楽はこのことを暗示しているかのようだ。

SONY-Classics/SK 66279
by Schweizer_Musik | 2005-04-09 13:35 | CD試聴記
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