カーゾンの演奏で聞くモーツァルトの「戴冠式」
作曲者 : MOZART, Wolfgang Amadeus 1756-1791 オーストリア
曲名  : ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調「戴冠式」K.537 (1788)
演奏者 : クリフォード・カーゾン(pf), イシュトヴァン・ケルテス指揮 ロンドン交響楽団
CD番号 : DECCA/UCCD-6030〜31





なんて楽しい音楽なのだろう。そして美しいのだろう。ケルテスのじっくりと鳴らすオーケストラの提示部の後、ひっそりとピアノが登場する瞬間の気品あるカンタービレはまさに天国的響きである。やや大人しすぎると感じるむきもあるかも知れない。グルダの演奏などを聞き込んでいると、はじめはそう感じるだろう。
でもよく耳を澄ませて聞いているうちに、この演奏の美しさがじんわり伝ってくる。そんな演奏だ。どちらが良いとか正しいとかいう問題ではないのは言うまでもない。
この曲の第2楽章は私の好きな音楽で、弾いたこともあり、愛着もある。で、この演奏を聞いていて、つい涙が出てしまった。硬質の音でメロディーが伴奏と対比し、更にケルテスの指揮するオーケストラと暖かな会話を重ねていく。ああこんな美しくって良いのだろうか…。
カーゾンは「上手い!」と驚かせるようなタイプとは違うピアニストだった。さすがにシュナーベルの直系の弟子である。そんな彼に、このモーツァルトはまさにうってつけの音楽であったのだろう。
どこをとっても音楽的!!最近はやたらと味の濃いモーツァルトが多いけれど、こうした品の良い美しいモーツァルトは絶滅危惧種になってしまったのだろうか?だったら残念なことだ。

写真は木造のブリエンツの教会。石造りの教会ばかり見てきて、この小さな教会に入るとなんだかとても懐かしいような気分になったものだ。
カーゾンの演奏で聞くモーツァルトの「戴冠式」_c0042908_1902565.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-05-16 19:00 | CD試聴記
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