ベートーヴェンのトリプル・コンチェルト
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ,ヴァイオリン,チェロのための三重協奏曲 ハ長調 Op.56 (1803-04)
演奏者 : ユージン・イストミン(pf), アイザック・スターン(vn), レナード・ローズ(vc), ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団
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この曲は、ダヴィド・オイストラフ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ、スヴャトスラフ・リヒテル、そしてヘルベルト・フォン・カラヤンという、これでもかというほどの個性の強いメンバーを集めて一期一会の大げんかをしながらのセッション録音が残されている。
あれ以上の演奏は、もうあり得ないだろう。極端なまでの緊張感の中で、名手たちが自分の世界をそれぞに築きあげながら、一つにまとまっていく様は、奇跡以外に表現のしようがないものである。
この演奏は、そんな凄い演奏に比べるのは気の毒だろう。ユージン・オーマンディの指揮が少し微温的…。いや、これこそが彼の真骨頂なのである。スターンもローズもそしてあまり知られることがないが、とんでもない名手イストミンが気迫あふれる演奏で全く素晴らしい名演なのである。そう、あのカラヤン他の凄い名盤がなければ、これかゲザ・アンダやヴォルフガング・シュナイダーハン、ヤーノシュ・シュタルケル、フェレンツ・フリッチャイの演奏あたりが私の一番となっていたに違いないのである。
それにしても、ユージン・オーマンディのベートーヴェンなんてという方はぜひ一度お聞きいただきたい。彼がいかに優れたベートーヴェン演奏をしていたことか…。
昔々、私はこの曲をベートーヴェンの失敗作の一つと見なしていた。恥ずかしながら…である。
もちろん、これは決して失敗作などではない。この曲はピアノ・トリオという室内楽の要素と古典派の精神でバロックの時代の合奏協奏曲を再構築したようなところが、名技性を追い求めていたロマン派の時代にやや受け入れられにくかったというに過ぎないと今は考えているし、私が駄作ではと思っていた主題の平凡さは、この曲の複雑な構造を明確にするバランス上の配慮だったのではと思い始めている。
大体、メロディー・メーカーでは無かったベートーヴェンに、主題が平凡だと文句をいうのはお門違いというものなのだろう。更によく聞けば決して凡庸なテーマなどでは決してないのだから…。
その緻密で、独特の展開によって、彼の主題が偉大なものへとすぐさま変化するのは、第5交響曲でもお馴染みであろう。
しかし、3人のソリストはまことに見事。集中力も抜群で実に力強い演奏だ。名演である。

写真はサンモリッツ近くのピッツ・コルヴァッチュの山頂を撮ったもの。4000メートルに近い展望台に訪れたわずかな晴れ間に撮った一枚。
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by Schweizer_Musik | 2010-05-25 21:57 | CD試聴記
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