シューベルトの交響曲第1番をツェンダーの指揮で聞く
作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名  : 交響曲 第1番 ニ長調 D.82 (1813)
演奏者 : ハンス・ツェンダー指揮 バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団
CD番号 : hanssler/93.120



以前にアーノンクールの演奏をとりあげたこの作品(以前の記事はこちら)であるが、現代音楽の数々の名演、そして自身の手による前衛的な諸作品によっても知られるハンス・ツェンダーの指揮による目覚ましい演奏を今朝聞いていたので、とりあげることにした。
これは実に素晴らしい演奏で、これで聞くとこの若書きの(と言ってもシューベルトは31才で亡くなったので彼の作品は全て若書き…)わずか16才の彼がすでに成熟した自分の言語を持っていたことは驚嘆に値する。
この曲にモーツァルトのリンツの影響やハイドンの交響曲の影響を指摘することは容易である。主題の単純さ、第1楽章の展開部の後、序奏から再現するあたり、やや未熟な感もある。彼がこれらの作品にもう少しこだわっていたら書き直していたかも知れないけれど、書き直すくらいなら新しい作品を作る方が良いとばかり、シューベルトは次から次へと作品を書き続けた。
残した分量は彼の作曲家としての活動した年月の長さからすれば恐ろしいほどの分量である。それがこのクオリティー!!
ツェンダーは若書きの習作とは考えていないに違いない。実に堂々たる立派な演奏。響きの隅々までよく歌い、鳴らしている。それはややもすると平板になりがちなシューベルトの音楽を立体的に聞かせる配慮にも満ちている。
第2楽章はシューベルトお得意の緩やかな行進が中間に挟まって、モーツァルトに似ているとは言え、明らかにシューベルトでないと出てこない転調の妙が丁寧に歌い込まれている。
こうした作品をこんなに愛情を込めて演奏してくれれば、全く文句はない。オケの響きにもう少し潤いがあれば…。特に弦!!これが繊細さに欠けるから木管などもやや硬く感じられる点が惜しいところ。ああ我らが神奈川フィルだったらと無い物ねだりをしても仕方がない。このオケには天才石田も山本さんも山田さんもいないのだ。
でも、この演奏は聞くに値する名演だ。響きに若干の難はあるものの、説得力満点の演奏である。

写真はチューリッヒ・グロスミュンスターのオルガン。ツヴィングリの本拠地でもあったこの聖堂は、プロテスタントの牙城であり、一時はこのオルガンさえも悪魔のパグパイプとして捨て去られ、失われたものである。
そのことをどうこう言うつもりはないが、すぐさま教会に音楽が無くなったことへの不満が現れ、新しい聖歌を作る運動が起こり、今日の合唱音楽の隆盛へとつながって行ったのである。
宗教改革からペスタロッチの教育改革、ネーゲリの合唱運動はプロテスタントの地方だけのことではないのだが、それでも興味深いことである。王侯貴族、あるいは贅沢という文化の揺りかごを持たなかったが故の興味深いことだと思う。
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by Schweizer_Musik | 2010-06-12 06:10 | CD試聴記
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