コンサートが終わる
チャイコフスキーの「四季」の二台ピアノ版の新アレンジの演奏会が終わった。まずまずの内容で、ところどころヒヤヒヤしたけれど、全体にはまあこんな感じかなというところか。
解説も私が書いた。
せっかくだから、そのプログラム・ノートを掲載しよう。ギャラはなしというボランティアなので、そのまま掲載しても平気だと思う(多分…)。

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ガーシュウィン作曲 ラプソディー・イン・ブルー (1924)

アメリカの作曲家ガーシュウィンは、もともとポピュラーの作曲家でした。作曲家として収入を得るようになってからも大変な勉強家であった彼は、ヨーロッパへ渡り、ラヴェルやストラヴィンスキーに作曲を教えてもらおうとしています。でも彼の才能と素晴らしい個性を認めていたラヴェルは、二流のラヴェルになるよりも一流のガーシュウィンになりなさいと諭したと言います。
そんな彼がある時、新聞を見ていると、ジャズの大家ポール・ホワイトマンがガーシュウィン氏に新作を委嘱という記事に目が止まりました。そんな委嘱は受けたことがないし、ホワイトマンに電話すると彼も困惑していました。すでに売れっ子だったガーシュウィンは新聞社に抗議しようとしますが、ホワイトマンはもう新聞記事になってしまったのだから書いてくれの一点張りで、とうとう彼はこの偽記事によって新作を書くことになったのでした。
この騒動は、ホワイトンが仕掛けたものだったと言われていますが、真相は闇の中…。でもその結果、彼はボストンへと向かう列車の中で、車輪の軋む音などの走行音からこの曲のテーマを思いつき、まず二台のピアノのための「ラプソディー・イン・ブルー」を書いたのでした。

ガーシュウィンはジャズもアメリカの民族音楽だと考えていたと言われています。ラプソディー・イン・ブルーというタイトルはジャズによるラプソディー(狂詩曲)という意味ですが、自由であけっぴろげな作風は、アメリカそのものと言っても良いでしょう。
様々なアメリカの芸術音楽の中でも最も有名で人気のある作品です。アニメ、そして実写版でもよく知られる「のだめカンタービレ」でもお馴染みですね。
この曲は、まずホワイトマンが自身の楽団のために編曲をし、後に組曲「グランド・キャニオン」でも有名なグローフェがオーケストラ用に編曲をして、今日ではこのグローフェ版がよく演奏会などで演奏されています。でも、最初の二台ピアノ版もよく演奏されるようになってきました。
今日は、その最初の形である二台ピアノ版でお聞きいただきます。


ムソルグスキー作曲 組曲「展覧会の絵」(1874)より

ムソルグスキーは、正規の音楽教育をほとんど受けたことがないロシアの作曲家です。ロシアの民族的な素材による作曲を目指す、五人組というグループに属していた彼は、「ボリス・ゴドゥノフ」などの歌劇にその才能の輝きを聞くことができますが、純粋な器楽作品としては知られているものはわずかで、この作品はその中でも特に人気のある、彼の代表作と言って良い傑作です。
友人の建築家で画家のハルトマンが亡くなり、その遺作展がモスクワで開かれたのは亡くなった翌年の1873年の2月でした。遺作展で友人の作品を見て、その絵から大いなるインスピレーションを受けたムソルグスキーは2〜3週間ほどで一気に作品を書き上げたのでした。
この曲はもともとピアノ独奏のために書かれてました。しかしムソルグスキーの死後、様々な編曲がなされたことでも知られています。有名なのはラヴェルが編曲したオーケストラ版ですが、その他にもチェロとアコーディオンや木管五重奏、金管バンド、更にはキース・エマーソンによるジャズ・フュージョン版や冨田勳氏によるシンセサイザー版など、おそらくクラシック作品として最も多くの編曲版のある作品でもあります。筆者も来年、この曲のオーケストラ編曲を行う依頼を受けていて、今でも新しい編曲が行われている作品でもあります。本日はその中の二台ピアノ版でお聞きいただきます。

曲は全部で16曲からなりますが、今日はその中から7曲を抜粋してお聞きいただきますが、まず、プロムナード。絵から絵へと移動する音楽としておかれたこの曲は、組曲の中でも六回出てきます。それを代表して最初のプロムナードをまず演奏します。
続いて「テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか」です。タイトル通賑やかで、子供たちの生き生きとした見事な描写を聞くことができます。
そして「卵の殻をつけた雛の踊り」。頭にまだ殻をかぶったままの可愛い鶏の赤ちゃんが踊っている様子を思い描いてお聞き下さい。ちょこちょこと動き回る様子が目に浮かぶようです。
「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」では表情が一転、強欲な商人ゴールデンベルクが、シュムイレをしかりとばしている様子が描かれています。いかにも尊大で威張り散らすゴールデンベルクを低音のテーマ、そしてペコペコ頭をさげて言い訳をするシュムイレを高音で…。見事な対比の中に描かれた傑作です。
続いて演奏されるのは「リモージュの市場」。ぺちゃくちゃと井戸端会議に忙しいおばさんたちと、店の売り子たちの声が活気のある表現となっています。
続いて演奏されるのは「鶏鶏の足の上に建つバーバ・ヤーガの小屋」。「バーバ・ヤーガ」とは森に住む怖い魔女のことで、子供を誘拐して取って喰うとか…。ハルトマンはバーバ・ヤーガの小屋をモチーフとした置き時計のデザイン画を描いていて、それからインスピレーションを受けた作品です。
最後は「キエフの大門」で、現在のウクライナの首都キエフに建設する予定であった凱旋門のデザインを募集したコンペに出品したもので、そこから受けたインスピレーションを元にムソルグスキーは大変雄大な音楽に仕上げています。


チャイコフスキー作曲 四季〜12の性格的描写 Op.37bis (1875)

この作品は、雑誌「ヌーヴェリスト」の企画で、1875年の一年間、毎月一曲のペースで作曲され、付録として連載された作品で、1885年にまとめて出版された、チャイコフスキー中期のピアノ作品の傑作で、十二ヶ月にそれぞれ季節感を表したタイトルを持つ十二曲からなる作品集です。
ちなみにタイトルのイメージは現在の暦と少しズレているように感じられますが、これが書かれた頃のロシアは太陰暦を使用していたためで、約一ヶ月ほどのズレがあると思っているのがよいでしょう。
どの曲も対照的な中間部が置かれたA−B−Aの三部形式で出来ていて、相応しいタイトルと小さな詩がつけられていています。

本来はピアノの独奏曲として書かれたこの作品も、ロシアの名指揮者ガウクによるオーケストラ編曲をはじめとして、いくつかの編曲作品が知られていますが、この度は私が演奏者のみなさんの依頼により、二台のピアノのために編曲しました。
原曲のイメージをなるべくそのままに、二台のピアノの響きの豊かさ、広がりを加え、オーケストラ編曲をするようなイメージで12曲を編曲しました。
チャイコフスキーのロシアの民謡や踊りの曲を取り入れながら、毎月楽しみながら書いたと伝えられるこの曲の初めての二台ピアノ版をどうぞお楽しみ下さいませ。

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コンサートでは各曲に添えられた詩の朗読とともに演奏された。なかなか良い趣向であった。詩はこちらを参照のこと。

終了後、聞きに来てくれた学生たちと大船駅の駅ナカのカフェでお茶を飲んで、買い物をして帰る。午後5時半過ぎだった。コンサート後の帰りの時間としては今までで最も早い帰還と相成って、帰って一杯やって遅い昼寝をし、今夕食を終えたところ。
楽しい一日だった。お世話になったみなさんに感謝!!

写真はコンサートとは全く関係なく、スイスのグリンデルワルド近くのグローセ・シャイデックからフィルストへ続くハイキング・コース。こんな道なら、どこまででも歩いて行けそうな気がする。
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by Schweizer_Musik | 2010-07-18 19:51 | 日々の出来事
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