「きままに音楽会2010 ー糸をかしー」
昨日は「きままに音楽会2010 ー糸をかしー」というコンサートを聞きに、代々木上原のジャスラックの隣にあるけやきホールというところに出かけた。
広島時代に関わりのあった作曲家の藤原典子さんの新作を聞くためであった。松下 功氏のプレトークがあり、10人の日本、韓国、香港などの若い作曲家と一人のベテラン作曲家の作品を聞いて来た。
以前にもこのコンサートは一度聞いたことがあるが、その時は外国勢の水準が低く、ちょっと厳しい評価だったけれど、今回は弦を使うというコンセプトで、皆、弦楽器を入れた作品を書いていた。ちょっと学校の期末の課題提出のような感じで、面白いと思った次第である。



Lee Yoonjungさんの「ミリネ(天の川)」は大変表現力の豊かなダイナミックな作品であったが、やや散文的で惜しいなぁと思った。ピアノは先日PTNAの仕事でご一緒させていただいた高木早苗さんで、さすがに見事な演奏を聞かせていた。
続く岡本優一氏の「双鏡」は二本のヴァイオリンのための作品で、発想もユニークで大変面白かった。ピツィカートをああいう形で使った曲は他にもあるけれど、二本のヴァイオリンという編成がユニークで感心し、感動もした。大したセンスだ。
信澤宣明氏のTOKYO SONATAは聞くべきものはほとんどなく、平凡な語法の羅列に終始し、評価の対象とはならない。自分の曲の紹介もふざけているようで、学生さんのお遊びに付き合わされた気分。
Park Eun-Haさんの"This is the Moment"はクラリネットとコンバスの二重奏。着想は面白かったけれど、やっていることがやや平凡。途中で"This is the Moment"と二人の奏者がつぶやきながら譜面をめくるのにはどういう意味があったのか、ちょっとわからなかった。
田村修平氏の「白と黒とグレーの世界」は弦楽四重奏の作品だったが、短い作品にしてはやや密度が低く感じてしまった。もう少し聞きたいという感じで、よく書けているのだけれど言い足りない感じであった。

で、長いコンサートだったけれどこれで半分が終わって10分ほどの休憩。
後半は箏とバイオリンのためのLam Puikwanさんの曲。着想や技法は面白いところもあるけれど、やはり散文的で平板に感じられた。唯一の箏の作品ということで期待したが、奏法などへの理解は深いと思ったけれど、音楽として結実するにはやや平面的になってしまい、説得力に欠ける。
後半2曲目は藤原典子さんの「繋がれた二つの時間」。これは川島信子さんの薩摩琵琶と歌のソロ曲。歌は歌詞のないヴォカリーズで幻想的な空間を描いていて面白いものだった。ただ、空間をどう演出したいのかが、まだ決め切れていないのか、長さを感じてしまった。変化というより展開、発展があの楽器、歌の中から引き出せたらと、少し惜しいと感じた。しかし、今回のコンサートでは岡本優一氏の曲とともに最も面白く、興味深く聞くことができた。
森田佳代子さんの「Reflected Picture」はヴィオラ独奏の曲。ヴィオラのみということで、新鮮さがあったけれど技法に振り回されてしまった気がしてしまった。もっと太いラインがあれば…。良いセンスを持っているように感じられるのだが。
Hong Suu Heeさんの"HERACLES"はなんとも力強いタイトルのピアノ・トリオ。ヴァイオリンには先日芸大フィルハーモニアのモーニング・コンサートでドヴォルザークのソロを弾いた景山昌太郎氏がいた。ダイナミックな作品であったけれど、曲はやや平凡。演奏に助けられた感じられるが説得力はあった。
大久保友子さんの「虹」という曲は弦楽四重奏曲。良い曲だったが、やや印象にうすい。何をどう描きたかったのか、やや不明…。
最後は最近よく色んなコンサート、コンペでお見かけする群馬大の准教授西田直嗣氏の曲だが、この作品についてはあまり面白く感じられなかった。ニューヨークの日本人学校の委嘱による作品の再演だったそうだが、古典的なソナタの形が必要だったのか、またメロディー・ラインが途切れ途切れで、楽器法など上手いので説得力はあるけれど、どうも私には理解不能だった。申し訳ない…。
ここでも高木早苗さんの見事なピアノが印象に残る。良いピアニストである。

以上、聞いての私の感想。帰りにアレンジのやり直しの電話がなければ、良い気分で帰れたはずなのだが…。やれやれ…。
写真は敬愛するピアニスト津田理子さんのお宅の庭で四年ほど前の3月の終わりに撮った一枚。涼しげなので…
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by Schweizer_Musik | 2010-07-24 10:55 | コンサートの感想
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