作曲者 : WALTON, William 1902-1983 英
曲名 : 交響曲 第1番 変ロ短調 (1932-35) 演奏者 : チャールズ・マッケラス指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 CD番号 : EMI/5 75569 2 この曲は、20世紀に生まれた作品の中でもずいぶん幸運で、多くの優れた演奏に恵まれ、人気も得ている作品である。それほど聞きやすいものでもなく、ウォルトンの作品の中でも渋いものの一つなのだけれど、名指揮者たちに愛されたことも大きいだろう。 この7月に惜しくも84才で亡くなられた名指揮者チャールズ・マッケラスによるこの録音は、それらの中でも代表的なものと言えよう。 1989年の一月、三日間ほどで第1番と第2番、そしてチェロの独奏をもつ小品「午睡」を録音しているのだが、面白いことに第1番と「午睡」がロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、第2番がロンドン交響楽団という二つのオケを振り分けている。あまりこうしたことの記憶がないのだが、どれも実に優れた演奏で、お薦めできる。 第1番には、アンドレ・プレヴィンの名演があり、作曲者自身の録音もある。トムソンやハンドリー、リットンなどの録音もあるし、第2番にはジョージ・セルの名演がある。 それでもこのマッケラス盤は購入する価値はある。明晰で知情意のバランスのとれた表現は、マッケラスの特徴でもあるけれど、この曲の暗い情念のようなものを実は最もよく表現しているように思うのだ。 第2楽章の"Presto, con malizia"も実はとても難しい楽章なのだけれど、さすがプロ集団、危なげなくは当然のこととして、この「悪意を以て」という指示をよく捉えて、発作的に割り込むフレーズ、拍子を無視したアクセント、対称的な柔らかな響きと破壊的、攻撃的な響きとの対比を透明感のある録音によって聞くことができる。 第3楽章の「憂鬱」も曲の雰囲気をよく捉えているし、オケをとてもよくコントロールされていてかつ無理がない。終楽章も実に優れた演奏だ。これはやはり今手に入れることのできる、最も優れた演奏の一つとして紹介しておかないわけにいかない。 ずいぶん前に出た時、すでにアンドレ・プレヴィンやトムソンの録音を持っていて、このCDをスルーしてしまったのがちょっともったいないことをしたという反省を感じている。マッケラスを侮っていたわけではないけれど、彼の録音は、ターリヒの弟子ということで、どうもチェコものにいつの間にか偏っていたようだ。 そんなつもりはないのだけれど…。 最近は、モーツァルトの全集やベートーヴェンの交響曲などで、ピリオド風の演奏も聞かせていたけれど、この英国紳士の素晴らしい遺産を今日はいくつか聞いてみようかと思う。 写真はベルンの旧市街を熊公園のあたりから撮った一枚。クレー・センターからの帰りのバスを途中下車して、久しぶりにベルンの象徴、熊さんを見てこれを撮った。まっ、熊公園は子供も含め、ずいぶんの人だかりだった。
by Schweizer_Musik
| 2010-09-22 09:04
| CD試聴記
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