ポンセのソナタ・ブレーヴェを被献呈者のシェリングの名演で聞く
作曲者 : PONCE, Manuel 1882-1948 メキシコ
曲名  : ソナタ・ブレーヴェ(短いソナタ) "Sonata breve"
演奏者 : ヘンリク・シェリング(vn), クロード・マイヨール(pf)
CD番号 : PHILIPS/PHCP-9256



ポンセは比較的晩学の人だった。但し、五歳の頃から作曲をはじめていて才能は幼少時より示していたものの、当時のメキシコの地方都市であるサカテカス(Zacatecas)あたりでは、そう作曲を学ぶとか言っても自由にはいかなかったのではないだろうか?
22才の時に500キロほど離れた中心都市のメキシコシティに出て、音楽院で学び、更に自分のピアノなどを売って自費で渡欧しベルリンなどで学んだ後に帰国して、メキシコ音楽院でピアノを教えるようになるのである。
メキシコの国民楽派の開祖とも言われる彼は、民謡などを取り入れて作品を発表。1917年からはメキシコ国立交響楽団の音楽監督に就任し、活躍。セゴヴィアの依頼で書いたギターのための「ソナタ・メキシカーナ」は彼をメキシコのローカル作曲家から欧州でも知られる存在へと押し上げた。
更なる研鑽をと、ポンセは1929年、再びヨーロッパに渡り、パリ音楽院でポール・デュカのクラスで勉強している。晩学とは言え、彼ほどの人が41才になってまだ学ぼうとする意志の強さに驚かされることである。その同級生にはヴィラ=ロボスやロドリーゴがいたというから凄い!!
1932年までパリで学んだ彼は、それまでのスタイルから大きく作曲様式を変えることとなる。素朴なメキシコの民謡などを素材していた国民楽派のローカルな作曲家から、印象派の影響を受けた20世紀の作曲家へと変貌していたのである。
彼の作品はこの辺りが大きな転換点で、この作品もその後期のスタイルによるもので、よく知られた「エストレリータ」のようなポピュラリティーからは距離を置くものとなっている。
短いソナタと題されたこの作品は、シェリングに献呈されたもので、作曲年代は知らないけれど、戦後の作品ではないかと想像され、おそらく晩年に近いものと思われる。
近代モードを使った新古典主義的な作品で、リズム、特にアクセントの付け方などに独特の味があり、ポンセらしさを感じるところである。3楽章からなるが、終楽章のリズミックな表現にメキシコの血が騒いでいるようであるし、第2楽章の幻想的な歌にエキゾチシズムを感じる。このあたりがきっとポンセの魅力なのではと思う。
しかし、ポンセと言えば、後期の作品はあまり知られていないのではないだろうか?ポーランドから亡命したシェリングとの友情が、協奏曲(かつてのヒット作「エストレリータ」のメロディーを使っていることでも有名)やこのソナタなど、もっと聞かれてほしいと思うばかりである。
言うまでもなく、シェリングの演奏は実に素晴らしいもので、このような名盤をいつでも聞けるようにメーカーはぜひしてほしいと思う。

写真はマロヤの湖に近いあたりの風景から…。良い感じでしょ?
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by Schweizer_Musik | 2010-10-12 08:49 | CD試聴記
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