(新)秋の夜長に音楽を聞く -10. フォーレのヴァイオリン・ソナタ第2番
作曲者 : FAURÉ, Gabriel 1845-1924 仏
曲名  : ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ホ短調 Op.108 (1916-17)
演奏者 : クリシア・オソストヴィッツ(vn), スーザン・トムズ(pf)
CD番号 : hyperion/CDH55030



秋らしいのかどうかよくわからなくなるような陽気で、変な感じだ。でも夕刻にもなれば、虫の声にああやっぱり秋が来たのだなとしみじみ思う。
秋の夜長に聞くものとして、このフォーレの曲などはどうだろう。以前にフェラスの演奏でとりあげた(こちら)、やっぱり第1番の方が有名で、そちらの方がとも思う。でも、フォーレ晩年の渋い渋い音楽スタイルが、メランコリックで、しみじみとしていて合っているように思うので、やはり2番の方にした。
前作から40年ほどの時を隔てて再びヴァイオリン・ソナタに取り組んだフォーレであったが、この頃は耳の病気で高音と低音がかなり聞こえにくくなっていたのではなかっただろうか?第1番がマリアンヌ・ヴィアルドとの恋愛を反映したのか、実に幸福な音楽として書かれているのに対して、この作品は不思議な諦念と透明感が支配しているようで、晩年のフォーレの心が反映されているのかとも思う。
主題のユニークさは特筆すべきだろう。また動機に第1番の遠い谺が聞こえる点もあまり指摘されることがないけれど、敢えてここにあげておこう。老齢に達したフォーレはこの曲を第1番を書いた頃を懐かしむように構想したのではないか。私にはそんな気がするのだ。
第2楽章の深く沈潜していく抒情は、甘美さが加えられ、深刻さからうまく逃れている。だからこそ深い思いがそこに表現されているのだろう。ピアノの低音を少なくし、響きを全体に軽くして深刻にならないように意識して書かれている。だからこそペダリングは重要だ。
スーザン・トムズはその点とても良い演奏を繰り広げている。オソストヴィッツの美しい音もまずまずである。グリュミオー、デュメイ、アモイヤル、ドゥーカン、フェラスの名演からすると、更に透明感に艶やかさがあれば等と思いもしないでもないが、最近聞いた中では秀逸な演奏である。

写真は更にシルス・マリア湖畔の風景から。
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by Schweizer_Musik | 2010-10-12 21:06 | 秋の夜長に音楽を聞く
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