祝!第22回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞、マウリツィオ・ポリーニ
作曲者 : SCHUMANN, Robert Alexander 1810-1856 独
曲名  : ピアノ・ソナタ 第1番 嬰ヘ短調 Op.11 (1832-35)
演奏者 : マウリツィオ・ポリーニ(pf)
CD番号 : Grammophon/423 134-2



マウリツィオ・ポリーニが第22回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞というニュースはずいぶん前に聞いたけれど、授賞式が今日だとかで、やはり長い間彼の演奏を楽しませていただいて来た者として何か…と思ったのだが、あれもこれも選びたい物ばかりで、迷ってしまう。
ショパン・コンクール出身ということもあるが、現代音楽も含め、膨大なレパートリーを誇る彼に今更ショパン?という気がしてくる。彼は二年前にルツェルンで聞いた。ショパン・プロだったが、現代音楽と組み合わせられた長い長いコンサートで、一緒に聞いていた細川俊夫先生も「長かったねぇ…」と笑っておられたのを懐かしく思い出す。
が、やはりショパンではありきたり過ぎるように思える。ヨッフムと組んだベートーヴェンとも思ったが、特にこれでないとというほどでもない。ブーレーズのソナタを選ぶのも良いかとも思ったけれど、この作品を語れるほど私は勉強していないので、資格なし…ということで、散々考えた上でデビューの頃の録音から、シューベルトの「さすらい人幻想曲」とこれが最終的に候補として残り、そしてこの曲となった。

シューマンの最初のソナタとなったこの曲。はじめてのソナタ形式による大作ということで、ずいぶん苦労して書いた後がうかがえる。発表当初、「観念的すぎる」とか「混乱している」などという批判がモシュレスなどからあがったというが、それは今日では逆にこの作品の魅力ともなっている。
ポリーニはありあまるテクニック、やや硬質な響きで風通しの良い演奏を行う。はじめて聞いたのは高校生の時だった。私のピアノの先生がリサイタルでこの曲を取り上げられた時に、行く前に勉強していこうと楽譜を買い、このレコードを買った。
その時は長い曲だなぁということと、ベートーヴェンのソナタとはずいぶん違うのに驚いた。まだショパンのソナタも知らなかったのだから当然だと言えば当然だったかも知れない。
しかし、この若書きの傑作とのはじめての出会いがこの演奏によるものだったとは幸運だったと私は思っている。
第1楽章には長大すぎるとも言える序奏があり、主部に入った後もこの序奏がくり返され、幻想曲、バラードなどのような様相を呈しているが、それはこの作品の独自の個性でもあるのだ。
第2楽章で彼の歌曲からとったという主題が実にチャーミングで、はじめて聞いた時にも魅せられて、何度も聞いた記憶がある。響きの重さ、軽さ、音色の細かな変化、そうしたことが大切さを痛感させられる。ポリーニのその見事なこと!!柔らかなクレッシェンド、ディミヌエンドに時々ドキッとさせられるアクセントが挟まれてながら、滔々と流れていく音楽は溜息が出てしまうほど美しい。
第3楽章はスケルツォ。間奏曲的に挿入されたこの楽章は、楽譜をまだ見ないままに最初聞いた時、どんな拍子なのかととても面白かった。ヘミオラを強調して使っているだけなのだけれど、それが面白くて、高校生の頃ちょっと真似してみたりしたものだ。
第4楽章のドミナント・モーションをこれでもかと強調した冒頭の和音の進行にドキドキしたら、ハーモニーを大きくとった部分が対比的におかれるという次第で、このシューマンの唐突で変化に富む音楽にはじめて聞いたときはずいぶんドキドキしたものだ。
高松宮殿下記念世界文化賞と言えば、ブーレーズ、バーンスタイン、リゲティ、スティーヴ・ライヒなど錚々たる音楽家たちが受賞している芸術・文化のノーベル賞とも言えるもので、そこにマウリツィオ・ポリーニ氏が選ばれたのも彼のこれまでの幅広い活躍からすれば至極当然の結果だと思う。心からの賛辞を捧げたい。

写真はベルニナ・アルプスの最高峰、ピッツ・ベルニナ。
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by Schweizer_Musik | 2010-10-13 07:55 | CD試聴記
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