(新)秋の夜長に音楽を聞く -12, シュトラウスのオーボエ協奏曲
作曲者 : STRAUSS, Richard 1864-1949 独
曲名  : オーボエ協奏曲 ニ長調 AV.144 (1945-46)
演奏者 : インゴ・ゴリツキ(ob), マティアス・エッシェバッヒャー指揮 ローザンヌ室内管弦楽団
CD番号 : claves/CD50-9010



コッホの名演があるので、これまで買うことはなかったやも知れないが、スイスの演奏家たちによるものということで、ついついこ鵜入。シュトラウス晩年の二重協奏曲も入っていて、これまた名演なので、その内とりあげておかないとと、考えているけれど、やはり愛してやまないこの名作をまずはとりあげておかないといけないだろう。
1945年の世界大戦終了は、音楽史においても大きなメルクマールとなった年である。
前衛を標榜する若い音楽家たちが戦地から帰ってきて、活動をはじめたこと、そしてそれまでの価値観が否定され、新しい価値観が台頭するきっかけを終戦が果たしたことによる。
それまで評価されていたものが価値を失い、新しいものが新しいということだけで名を成す時代でもあった。良い悪いでなく、そうした時代があって今日があるのだ。
さて、この協奏曲はそうした古典的なものと、所謂旧世界に属するシュトラウスの、黄昏の音楽である。サロメなどで新しい音楽技法への足がかりを持ちながら、シュトラウスは「ばらの騎士」でその絆を自ら断ちきり、古い音の世界に舞い戻ってしまう。良いことか悪いことかなどという評価とは別の次元の話だと私は考えているが、スイスではオトマール・シェックなどがよく似た人生を歩んでいる。
そして、二人とも第一次大戦後は新しい世代を代表する気鋭の作曲家として、名を成したのであるが、第二次大戦が終わる頃には極端に作風をロマン派を通り越して古典派の世界へと引き戻していくのである。
このオーボエ協奏曲はシュトラウスの最後の4つの歌とともにそうした旧世代の音楽の戦後の最も美しい成果なのである。
ゴリツキは柔らかな響きのオーボエで、実に音楽的だ。エッシェバッヒャーの指揮は可もなく不可もなくというところで、特に優れているということもないが(この点でカラヤンと組んだコッホの演奏はソロ、オケともに完璧であった)、この美しい作品を鑑賞するのに何ら問題はない。
モーツァルトなどが好きだという人でもこの作品は楽しめるのではないか?20世紀に書かれたとは思えない透明感の
ある、そして全編にメロディーが溢れているこの作品の名演として長く親しまれるべき一枚だ。

写真はシュタンスの波止場のそばにあるルツェルン湖に面して立つ古い塔。
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by Schweizer_Musik | 2010-10-18 21:07 | 秋の夜長に音楽を聞く
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