バーンスタインのミサ・プレヴィスを聞く
作曲者 : BERNSTEIN, Leonard 1918-1990 米
曲名  : ミサ・プレヴィス "Missa brevis" (1988)
演奏者 : ロバート・ショウ指揮 アトランタ交響楽団団員, 合唱団, デレク・リー・レイギン(c-ten)
CD番号 : TELARC/CD-80181



1988年に書かれた、極めて短いミサ曲である。キリエからドンナ・ノービス・パーチェムまで6楽章全てを演奏しても10分足らず…。コンパクトな音楽は打楽器アンサンブルと混声合唱、そして独唱からなる。沈痛なキリエのコーラスが終わるとチューブラー・ベルが左右から聞こえてきてグローリアと神への讃美が始まるという寸法である。
独唱は合唱に対して従属的な関係に設定されていて、音楽は古いグレゴリオ聖歌などと同じ古典的な旋法によって書かれ、合唱を中心に進められる。
ほとんどア・カペラのカトリックの典礼文につけた宗教作品と言って良い。それをユダヤ人であるバーンスタインが書いたところにこの曲の深い意味が(あるいは意義が)ある。
スペクタクルなシアター・ミュージックである「ミサ」は宗教音楽と考えるならかなり特殊なものと言えるが、この作品はあくまでそのままカトリックの典礼で使える音楽として書かれている。短いミサ曲(プレヴィス)なら省略されることもある、ドンナ・ノービス・パーチェムをあえて最後の楽章にもってきて、平和を祈る音楽として書かれている。そしてそれがバーンスタインの晩年の1988年、東西冷戦が終結へと向かう直前の時期に書かれているところに私は注目するのである。
前の「ミサ」がベトナム反戦があった。この小さな曲はおそらく冷戦の終結が背景にあっのでは…と推測している。カンボジア内戦をはじめとする数々の冷戦が生んだ紛争も、この時期に次々と終結している。
偉大な平和主義者であったバーンスタインが、この曲の最後にドンナ・ノービス・パーチェムをおき、それに「ミサ」の遠い谺を私は聞くのである。
軍をひたすら増強し、武力と経済力で世界を席巻しようとする、どこかの野蛮な大国がアジアに存在し、東シナ海や南シナ海で他国を蹂躙し、武力を背景に侵略をし続けている。不安定な世界を作ろうとするそういう大国に対して、そして危険きわまりないナショナリズムを振り回すその国の若者たちに、このささやかな音楽を聞いてほしいと思うのだ。
平和で、他国を、他者を尊敬し、尊重する社会はいつになったら出来るのだろうか?私のように素朴であまり知識のない平和主義者はそんなことを思うのである。

写真はスイスのミュスタイアにある聖ヨハネ修道院付属教会の有名な壁画である。世界遺産。
c0042908_2131459.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-10-24 21:31 | CD試聴記
<< (新)秋の夜長に音楽を聞く -... ウォルトンの「ペルシャザールの... >>