ベートーヴェンの「運命」を小澤征爾指揮で聞く
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : 交響曲 第5番 ハ短調「運命」Op.67 (1807-08)
演奏者 : 小沢征爾指揮 シカゴ交響楽団
CD番号 : RCA(TOWER-RECORDS企画)_TWCL1001



1968年録音のこの演奏は、私が音楽を聞き始めた頃にはもう手に入らなかった物で、最近タワー・レコードが企画して出してくれたものを手に入れて聞いた。
この時代、小澤はずいぶんたくさんの録音を行っていて、そのクオリティの高さは尋常ではなかったと思う。トロント時代の最後の頃の演奏である。この後1970年にタングルウッド音楽祭の音楽監督になり、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督にも就任する。
ボストン交響楽団に行くちょっと前のこの時期、小澤征爾という指揮者が凄まじい輝きを放っていた時だと思う。無論、ボストン交響楽団時代も!!なのだが、この演奏を聞きながらそれは痛感させられる。
彼のベートーヴェンはこの時代、どうも評論家からは今ひとつだった。まぁ、フルトヴェングラーやカラヤンなどのヨーロッパの重鎮と比べてどうの…という話で、先入観にとらわれていたとまでは言わないまでも、この演奏を聞きながら颯爽と、ただ正確なだけではない音楽的な演奏に今の時代ならばきっと受け入れられる物を持っていると思う。
この演奏が今ひとつと言われていたのは、多分当時のシカゴ交響楽団があまり良くなかったからではないだろうか。この演奏では大変良いアンサンブルを聞かせているけれど、弦の響きなどライナー時代と比べるとずいぶん劣るように感じる。確か、マルティノンが辞任したのがこの年で、1970年にゲオルク・ショルティが音楽監督に就任するまで、シェフ不在の状態だったと記憶している。
それが影をひいているのか分からない。でも第3楽章から終楽章にかけての盛り上がりは大したもので、指揮者の力量がよく出ている。
ついこの前、この曲の第1楽章と終楽章をアマ・オケでやりたいので、編成を縮小してほしい。あわせてカットしてほしいという依頼があり、断ったことがある。ベートーヴェンのスコアに手を入れるなんてことは、私には絶対できない。やるならば、カットしないで、そしてエキストラを頼んで編成を大きくしてやってほしい。彼のスコアは完璧だからだ。手を入れてまでプロにのせるような作品ではない。
見事な第3楽章から力強く盛り上がっていく終楽章を聞いていて、そんなどうでも良いことを思い出していた。小澤の指揮の志の高さが「運命」をやってみたいだけの指揮者とあまりに際だって対比されてしまった。多分彼とこの時の小澤はあまり歳も違わないことだろう。
さて、この時期にいくつかの録音を小澤は行っていて、「展覧会の絵」や「春の祭典」、チャイコフスキーの五番のシンフォニーなど録音しているが、この時期の録音はシカゴ交響楽団や、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団など、組織がちょっと…という時にやったものが多く、ボストン時代の目覚ましい録音に比べると目立たないものの、結構クオリティーが高くお薦めである。

写真はソーリオの村。
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by Schweizer_Musik | 2010-11-07 07:51 | CD試聴記
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