(新)秋の夜長に音楽を聞く -19. フォーレのチェロ・ソナタ第2番
作曲者 : FAURÉ, Gabriel 1845-1924 仏
曲名  : チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 Op.117 (1921)
演奏者 : スティーヴン・イッサーリス(vc), パスカル・ドゥヴァイヨン(pf)
CD番号 : hyperion/CDA 66235



不思議な淡い焦燥感と軽やかな諦念はあまりに独特で、そして美しい。絶望は彼の音楽とは無縁のものだ。あくまで人生を肯定的に見据えている安定した精神こそが、この美しさの根源だと私は思う。
実際には複雑な和声を使い、ユニークな主題を用いながら、それを気付かせない奥ゆかしさは、まさに音楽をたくさん聞き込んできた人が感嘆の声をあげるように出来ている。外面的な効果で人の心をつかむなんて下品で薄っぺらな音楽なんて、フォーレには無縁のものである。
イッサーリスと名手ドゥヴァイヨンのデュオは、この音楽の精神をよく捉えている。わざとらしさ、これ見よがしな表現は一切無縁のねのとして、深く沈潜していくフォーレの心にどこまでも寄り添っていく。まさに名演とはこういう演奏を言うのだろう。
第2楽章の訥々とした歩みを、この演奏ほど優しく、そして淡々と歌い上げたものはないのではないか?
晩年、耳が聞こえにくくなり、音楽家として大きなハンディを隠そうと、無理をし、スイス各地を転々としながら、作曲をしていたフォーレ。
そんな彼の足跡を辿る旅をいつの日かしたいものだと、私はずっとずっと思っている。

写真はフォーレが滞在したスイスの町の一つであるロカルノの1ショット。
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by Schweizer_Musik | 2010-11-08 11:13 | 秋の夜長に音楽を聞く
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