ベートーヴェンの「皇帝」をコヴァセヴィッチの弾き振りで聞く
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調「皇帝」Op.73 (1809)
演奏者 : スティーヴン・コヴァセヴィッチ(pf)指揮 オーストラリア室内管弦楽団
CD番号 : EMI/CDM 7 64174 2)



この曲は、名曲、人気曲だけあって、たくさんの名演がある。私はラドゥ・ルプーがルーマニア時代にイオシフ・コンタと録音したものと、ウラディミール・ホロヴィッツがフリッツ・ライナーといれた異様にテンションの高い演奏を愛しているものの、他にも色々と聞く。でも基準はラドゥ・ルプーの演奏で、若いラドゥ・ルプーの意気込みが伝わってくる、凄い演奏である。
さて、このコヴァセヴィッチの演奏は、このラドゥ・ルプーの座を私にとってははじめて脅かす、超のつく名演なのである。オーストラリアの室内オーケストラも大変よくやっていて、どこもとても音楽的。そしてテンションが高い!!
ピアノの音の美しさはもう破天荒な水準に達している。コヴァセヴィッチがこれほどの巨匠になっていたことをつい先日まで知らなかった私は全く愚かだった。
何しろ凄いテンションで、一気呵成にこの曲を聞かせてしまう。このテンションの高さは、この曲が求めている世界でもあると私は思っている。
「皇帝」は若者のための音楽だと思う。年寄りのためにはその前の4番があるではないか。あの思索に遊ぶ世界は、この「皇帝」では必要ない。ここでは力強く、華麗で、悲劇の気配の全くないヒロイズムが謳歌されているのである。あるのは希望!!
こうした音楽故に、この演奏のような推進力と力感が不可欠なのだ。だから、ラドゥ・ルプーの若い方(ズビン・メータとの新しい方ではない!!)に、そしてまだ若かったホロヴィッツが、弾丸ライナーと共演したものによりこの曲らしさを感じている次第である。

この演奏で、惜しいところは第2楽章から第3楽章への移行部で少し前のめりに走ってしまうことと、第3楽章の冒頭がテンポが少々上滑りしているところ。そして管楽器のソロで音色に後一歩輝きがほしい。
アンサンブルの反応の良さが、ピアノにちょっと反応し過ぎて崩れそうになるところが、悪く感じられるところ(第3楽章冒頭)と反対にスリルとエネルギーの横溢を生んでいたり(第1楽章)するので、一長一短なのかもしれない。
あと、3楽章のコーダがやや一本調子になりかけている。弾き振り故にちょっと疲れてきたのではなどと邪推してみたり…(笑)。
いや、それにしてもこのコヴァセヴィッチ…、恐ろしい奴だ。すごいピアニストがいたものだ。今後は絶対にチェックを忘れないようにしなくては!!

こちらでも聞ける。会員になる必要はあるが、こんな名演をダウンロードできるなら…。

写真は、スイス、エンゲルベルクの朝。エンゲルベルク…天使の丘…良い名前だなぁ…。駅前からの風景。良いでしょ?
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by Schweizer_Musik | 2010-11-30 18:27 | CD試聴記
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