ブロッホのヴァイオリン協奏曲をメニューインとクレツキの演奏で聞く
作曲者 : BLOCH, Ernest 1880-1959 瑞西→米
曲名  : ヴァイオリン協奏曲 (1938)
演奏者 : イェフディ・メニューイン(vn), パウル・クレツキ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
CD番号 : EMI/2 64131 2



メニューインのEMI録音を集めたボックスものからで、今は手に入りにくくなっているので、ちょっと気がとがめるが、パウル・クレツキの残した録音の中でも最重要な演奏の一つと私は考える。ウィレム・メンゲルベルクやシャルル・ミュンシュの指揮したヨーゼフ・シゲティの録音も良いが(時にびつくりするような傷もあるけれど…)整っていて音も良いこのパウル・クレツキ指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏をユロフスキ指揮のカプリチオ盤が出た今でも最上と私は考えている。
メニューインのボウイングが1963年のステレオ録音にしては安定しているのもありがたい。結構荒れた演奏もある時期で、良いものとそうでないものの差が激しい頃であったからだ。
特徴的なモード技法による作品は、オーケストラの達人であったブロッホの見事なスコアリングによって華麗な響きを得ている。誠に素晴らしいスコアで、何故この名作の録音が少ないのか、全く理解に苦しむ。ベートーヴェンやチャイコフスキーの協奏曲ばかり録音していないで、こうした作品で新しいファンを掘り起こす努力をしないでいては、音楽業界はじり貧もいいところだ。
演奏するレパートリーが100年前の演奏会と大して変わらないような保守的なというか、干涸らびた発想で成り立つと思っているとしたら、生きた音楽家である必要はないし、CDだけを聞いていればいいのだ。
いや、つい興奮をして、あらぬことを書いてしまった。しかし、新しいものを味わい、それを評価していく素地を私たちは大切にしたいと思うし、こうした隠れた?名作をもっと積極的に市場に送り出す努力を業界はしてほしいと切に思う。

写真は早春のバーゼル近郊の村、アーレスハイム。以前にも書いたが、この村には素晴らしい1761年ジルバーマン製造のオルガンがある。これは1959年から1962年にかけてスイスの名工メッツラーによって修復されて現在に至る名器である。ライオネル・ロッグをはじめ多くのオルガニストが愛したこの楽器がある修道院教会に私は二度ほど訪れているが、この村について書かれたものはまだ見かけたことがない。
残念なことである。山の上にある城はどういう歴史を持っているのか、私は知らないが、交通の要衝であったこの地域らしいと感じるものでもある。
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by Schweizer_Musik | 2011-02-12 09:22 | CD試聴記
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