作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独
曲名 : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68 (1876) 演奏者 : 小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ CD番号 : DECCA/UCCD-9802 昨日届いたCDである。早速、ちょっと怖々聞いてみた。そして考えた。色々と考えた。また聞いてみた。そしてまた考えた。 今から20年前、旧東ベルリンでのライブとは違うのは冒頭から明らかで、かつては力こぶの入った強い響きで始まった第1楽章が、流れるような柔らかな響きで始まる。その違いに、そして20年という歳月に、小澤征爾という人の歳月の中から深まっていった人間そのものに感じ入った。 Un poco sostenutoの序奏を終え、Allegroまでの音楽の作りが、結構平坦なのにまず驚かされた。そしてAllegroに入っても音楽は広がりを感じさせるが、やはり平坦な歩みで続いていく。この平坦に感じさせるのは、低音に偏った録音が主な原因ではないかと思う。 小澤征爾の指揮に反応していくオケも集中している。だが、やはりなめらかで平坦。それはあまりタメないで、サラサラと流れていくからなのではないか。 第2楽章も歌ってはいるが、カラヤンの晩年の録音のようなうねりが聞こえにくい。耳を澄ますとこの苛立たしい薄〜い録音の彼方から天使の歌が聞こえてくるのだから、当日、会場で聞かれた方はさぞかし…と思うのだが、感銘はややアメリカン…。 オーボエとクラリネット、そしてフルートも参加しての美しい歌が歌い継いていく大好きな場面も、一生懸命耳を澄ませば、小澤征爾とオーケストラが実に素晴らしい演奏を繰り広げていることに気がつくのであるが、なかなか伝わってこないもどかしさばかりで、これはやはり記録としてあるべき一枚なのだと考えはじめた次第である。 終楽章で、鳴り響くホルンに名手バボラークもいるそうで、その響きは私ごとき耳では聞き分けられないが、良い演奏だと思う。ただ、ちょっと速めのテンポが上滑りするところもあって、完成度としては今ひとつではないだろうか。 小澤征爾のブラームスの第1番を聞くならば、旧録音をまずお薦めするべきだと思う。これは病から復帰した小澤征爾氏の快気祝いとして、そして彼とサイトウ・キネンの更なる歴史を刻む再スタートをきる記念としておいておくことにしよう。 小澤征爾ファンの一人として、彼の復帰を心から喜ぶ。そして更に良い演奏をいつまでも、そしてたくさん聞かせてほしいと思う。 写真はアーレスハイムの修道院の天井画。
by Schweizer_Musik
| 2011-02-12 10:56
| CD試聴記
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