ブラームスのチェロ・ソナタ 第2番をヤニグロとバドゥラ=スコダの演奏゛て聞く
作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独
曲名  : チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 Op.99 (1886)
演奏者 : アントニオ・ヤニグロ(vc), パウル・バドゥラ=スコダ(pf)
CD番号 : MCA/MCAD2-9843



1886年、スイスのトゥーンで作曲された作品である。ベルンの友人の家で試演されたはずだ…(うろ憶え…)。冒頭、スイスに着いて喜びが爆発するかのような歓喜の音楽ではじまるこの作品は、晩年の作品群の中でも異色の積極性と中期の作品のような力強さを取り戻している。
考えてみれば、ドッペル・協奏曲を同時に書いていたわけで、ブラームスがこの低音楽器を用いて縦横無尽に活躍させる作品を、スイスのトゥーンの清涼な空気の中で書いたことは、私のようなスイス好きにはとてもとても嬉しいことなのである。
この作品は、以前、ピアティゴルスキーの録音をとりあげたし(記事はこちら)、アンヌ・ガスティネルの演奏もとりあげた(記事はこちら)。ガスパール・カサドと原智恵子の演奏を溺愛するも、その他にもこの曲はたくさんCDを所持している。この曲が特に好きなせいもあるが、残念ながらこの曲が好きだという人は、チェロをやっている人以外では、まだ出会ったことがない。
残念なことである。こんなに良い曲なのに…。
ヤニグロの演奏は、もう20年ほど前にMCAの超廉価盤で発売された時に手に入れたもので、昨年末、大阪に帰郷した際、懐かしくてコンピューターに取り込んでiTuneで時々聞いて楽しんでいるものである。
昨日、こちらに行っているとアップされていたので、ああもうそういう時代なのだなぁと思った次第でもある。classic-japanでは録音年代がはっきりしていないようだが、1956年の録音だとMCA盤には表示されていた。
アントニオ・ヤニグロの演奏はリパッティと組んだ小品の録音があったりもするが、私のような者には中学生の頃、ザグレブ室内管弦楽団を振って録音していた指揮者としての印象の方が大きい。その後、大チェリストであったこと、フリッツ・ライナーとの「ドン・キホーテ」でそれは強く印象づけられ、ベートーヴェンのチェロ・ソナタやブラームスのこの録音などを知ることとなる。
この録音を聞いてほしい。アントニオ・ヤニグロの生き生きとした表現はモノラルとは言え、瑞々しいヤニグロのチェロがスピーカーからこぼれてくるようだ!!


写真はそのブラームスがトゥーン滞在中に訪れ、ここからカンデルシュテークへの山越えの数日かかりの長距離の山歩きをしたという記録の残るミューレンの村の写真。私の写真の腕が下手なせいで、大きくフレアが写り込んでしまっている。エクトプラズムではないので、ご安心を(爆)。
でもブラームスが見た風景とほとんど変わらない風景なのではないだろうか?ミグロが出来たり、テニス・コートが出来たり、アルメントフーベルへのケーブルカーが出来たりと、変わったところもあるだろうが、総じてミューレンをはじめとしてスイスの町や村は、大きくその姿を変えたりしていない。戦災にあっていないことも大きな理由でもあろうが、それ以上に、もうかるとなるとホテルでもなんでも無制限に建てて、「開発」してしまうどこかの国と、考え方が違うのが大きな理由であろう。
私のような古いものを愛してやまない者には、羨ましい限りである。
ロンドンより、パリより、そして麗しのウィーンよりも私はこのミューレンの村を愛している。(同じようなことを誰かが書いていたなぁ…笑)
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by Schweizer_Musik | 2011-03-28 22:26 | CD試聴記
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