ペルトの交響曲第3番をヤルヴィの指揮で聞く
作曲者 : PÄRT, Arvo 1935- エストニア
曲名  : 交響曲 第3番 (1971)
演奏者 : ネーメ・ヤルヴィ指揮 バンベルク交響楽団
CD番号 : BIS-CD-434



このCDを購入したのは、もう二十年近く前のことである。ペルトが好きになりかけていた頃で、このCDですっかり夢中になってしまった。1971年と言えば、まだ60年代前衛の潮流が強い影響を与えていた頃だった。この頃にペルトはすでに調性への回帰を決定づけていた。
60年代に書かれた交響曲第2番では、まだソ連の一員であったエストニアにあって、よくぞここまでというほどの前衛性を確立していたペルトは、第3番で古典的で簡素なハーモニーへと回帰していく。
おそらくは、あまり多くの前衛音楽についての情報が無かったはずのソ連にあって、ペルトは自らの語法の確立へと向かったのである。
この作品はその過渡的作品として極めて重要である。ここを通って、「アルボス」や「フラトレス」などの傑作群を生み出すに至ったのであるから…。
祭典的であり、呪術的な第1楽章は突然途切れるように終わり、そのまま祈りの音楽のように静謐な世界が弦を主体として描かれる第2楽章へと繋がっている。次第にざわめきを加え、盛り上がって行っても、またゴジラの登場のような強い打撃があっても、すぐに静寂へと回帰していく。単純ではあるけれど、実に雄弁な音楽である。そして美しい!
終楽章もまたそのまま続いていく。楽章で分けられているけれど、単一楽章の区分のようなもので、静寂から次第に動きが加わり、祭典的な厳かさと力強さが加わっていく。

ちなみにネーメ・ヤルヴィはこの作品を献呈されていて、二度録音している(そうだ…)。私はこの録音しか聞いていないけれど、この作品はペルトの後の人気作を別にすれば、例外的にいくつかの録音が存在している。
私はウェルザー=メストの録音も気に入っているけれど、やはりこの曲についてはネーメ・ヤルヴィの最初の録音(二度目は聞いていないので…)以上とは言えない。まず一度は聞くべきものではないだろうか?
いつもお世話になっているこちらにこの音源がアップされていた。良いのかなぁと心配になりながらも、私は所持している大切なCDで聞いている。

写真はルツェルンのホテル・シュヴァィツァーホフ。ここにワーグナーが寝泊まりしていたこともあるし、出来たばかりのトリスタンとイゾルデを知人たちにピアノではじめて披露したのもここである。
変哲もない建物だけれど、こうして歴史を知って見ると、ちょっと見え方が違って来る…。
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by Schweizer_Musik | 2011-03-30 13:19 | CD試聴記
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