バルトークのヴァイオリン・ソナタ第1番を五嶋みどりの演奏で聞く
作曲者 : BARTÓK, Béla 1881-1945 ハンガリー→米
曲名  : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 Op.21 Sz.75 (1921)
演奏者 : 五嶋みどり(vn), ロバート・マクドナルド(pf)
CD番号 : SONY-Classical/SICC-814



五嶋みどりの演奏は、洗練の極に達している。この作品からこれほど繊細な世界を描き出すとは!!
第1楽章から主題間の対比を印象づけながらも、強烈に際立たせることなく、感情を抑えて歌うヴァイオリンと、正確な時を刻み、ソロを補強していくマクドナルドのピアノが、この作品がデリケートな世界を描いていることを教えているように思えてきた。
かつてのゲイヤー(ゲイエル)への思慕を反芻するかのような音楽なのだ。第2楽章の思索的な音楽は、バルトークらしい「夜の音楽」ではなく、優しい雰囲気に満ちている。その中に少しだけ棘があるのもバルトークらしいが…。終楽章の激烈な音楽もこの二人にかかるとハンガリーのジプシーからパリに住むバスク人の音楽に聞こえるから不思議だ。
決して迫力に不足しているわけでも、パンチに欠けるわけでもない。演奏はすでに完璧だ!!
比べてみれば、様々な感情が沸き立つかのごときクレーメルとアルゲリッチによるベルリン・リサイタルの演奏とは対極にあるがごとき演奏であるが、それも五嶋みどりの共演をしているマクドナルドのピアノにあるのかも知れない。塩川悠子とシフの力強くも繊細な演奏も私は好きだったけれど、五嶋みどりの演奏は更に洗練の度を加えており、私今後この演奏を第1に考えることにしたい。
録音が若干おとなしい感じで、もっとパワフルに聞こえても良いところも無きにしも非ずであったが、やはりこの演奏は凄い!!クレーメルとアルゲリッチのEMI盤(グラモフォン盤はアレグレッシヴな部分が粗く聞こえて私は好きではないので…)と、長年聞き込んできた塩川悠子とシフの演奏の三つが今後とも私のナンバーワンならぬナンバースリーであり続けるだろう。
さて仕事に戻ろう。

写真はルガーノのロレンツォの聖堂から少し下ったところ。前の写真と同じところあたりを撮ったもの。カテドラル通りという名前がどこかに写っているはず…。
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by schweizer_musik | 2011-05-10 08:01 | CD試聴記
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