モンのシンフォニアを三瓶十郎指揮 古典音楽協会の演奏で聞く
作曲者 : MONN, Matthias Georg 1717-1750 オーストリア
曲名  : シンフォニア ト長調
演奏者 : 三瓶十郎指揮 古典音楽協会
CD番号 : fontec/FOCD3131



日本の古楽演奏の草分け的存在であった、故三瓶十郎氏の指揮する古典音楽協会の演奏である。CDには服部幸三氏、皆川達夫氏というお歴々が讃辞を述べられている。そのことだけでも、彼がいかに多くの人たちから敬意をはらわれる存在であったかがわかるだろう。
こうした「売れない」パイオニア的仕事を、高いクオリティでなさっていたということだけでも、頭をさげざるを得ない。資本主義の法則だけでは音楽はいずれ疲弊する。新しいジャンルに果敢に挑み、そこから流れ出す泉を探し、そしてそれを育てる努力を常にしていなければ、そして三瓶十郎氏のような人がいなければ、今日の我々の音楽生活はどれだけつまらないものになっていたことか…。
モンと言えば、シェーンベルクが編曲したチェロ協奏曲で知っているだけであったが、こうして聞くとバロックの様式を残しながらも、初期のウィーン古典派の一翼を担う存在であったことがよくわかる。彼がわずか33才という若さで亡くならなければ、もっと違った評価を受けたことであろう。
軽快で、優美な音楽は短い初期のシンフォニアのスタイルでも十分に味わえる。そして三瓶十郎氏の指揮する古典音楽協会の優れた演奏は、古楽器奏法の研究が進んだ今日から見れば、いささか中途半端なものと聞こえるかも知れないが、かつては演奏にチェンバロが入っていただけで違和感をもたれたものなのだ…。今は昔のことであるが、それでも忘れ去ってしまうには惜しい録音である。

簡単な経歴もネットで検索しても出てこなかったので、記載しておこう。
1923年10月10日東京四谷に生まれる。
1940年暁星中学を経て、東京音楽学校(現東京芸大)のヴァイオリン学科に入学。ウィリーフライ、兎束達夫、小野アンナに師事。指揮を金子 登、渡邊曉雄に師事する。
1943年、学徒兵として応召。
1945年終戦と同時に帰還。そして東京音楽学校を卒業。在学中より弦楽合奏団(AMG)を組織し、コンサート・マスターに就任。
1946年東京フィルハーモニー交響楽団に入団。この頃からバロック音楽の研究を始める。
1953年弦楽合奏団をバロック音楽の演奏を主とする古典音楽協会へと改組し、常任指揮者として活動を開始する。
1967年通奏低音の研究のために文化庁の在外研究員として渡欧。ヴェンツィンガー教授などから研究を賞賛される。
他、1953年〜1973年上野学園大学講師。1953年〜1973年新潟大学教授。
1983年、61才にて没。
(CD、ライナーより)

華々しい経歴ではないが、地道に、そして誠実に音楽に向かい続けたことがうかがえ、深く敬意を表したい。
こういう先人がいて今日があること。そして華々しい活動ばかりに目が行くのは仕方ないにしても、地道に音楽に向き合い、評価されるかどうかなどということではなく、信じた道を進む誠実な音楽家に少しでも目を向けてほしいとつくづく思うのである。

写真は前と同じブリエンツ・ロートホルン山頂からの風景。背景の湖水はブリエンツ湖。小さく登山鉄道が写っている。
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by schweizer_musik | 2011-05-16 20:38 | CD試聴記
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