作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独
曲名 : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83 (1878-81) 演奏者 : エマニュエル・アックス(pf), ベルナルト・ハイティンク指揮 ボストン交響楽団 CD番号 : SONY-Classical/SK 63229 ルービンシュタインのように華麗さはないけれど、この伸びやかな歌い口は私の好みである。アックス特集…(笑)の第3弾はブラームスにした。 大体、室内楽を得意とするピアニストを小粒であるとか、線が細いとか、言いがかりとしか思えないような大雑把な切り口で切って捨てる傾向が、私の子供の頃のレコード批評に多かったように思う。 実際にそんなことはあり得ないのだけれど、最近はちょっとは変わったのだろうか…。 アックスは極めて真っ当な解釈で悠然とした世界を描いていく。エミール・ギレリスとオイゲン・ヨッフムのグラモフォン盤のように遅すぎず、かといってホロヴィッツとトスカニーニの演奏のように速すぎず、良いテンポで演奏している。 しかし、私はこの演奏に対してはやや不満であった。何がと言われて答えづらいのだけれど、この演奏が名指揮者のベルナルト・ハイティンクとボストン交響楽団という素晴らしい共演がいるのに、ファンタジーが膨らまないのだ。ティルソン・トーマスとのベートーヴェンではあれほど積極的だった表現意欲が萎えてしまったかのように、どこもかも縮こまって聞こえる。 無論、凡演では決してない。そこかしこに得も言われぬ瞬間が用意されている。しかしながら、この曲のきら星のような名演の数々の前で、この大人しさは今ひとつ印象が薄い。 ハイティンクとアックスが協調しすぎていて面白くないのだと思う。よく出来ているし、細かなテンポの動かし方など、さすが巨匠たちの芸である。疑いもなくこれは第一級品なのだが、あまりにできすぎていてつまらないのだ。どこか破天荒で、主導権争いをしながら、様々なパートが刺激し合うような室内楽的面白さがこの名手たちの演奏からは聞こえず…であった。作曲者からすると、ここまで磨き上げて下さってありがとうというところだろうが、聴衆がそれで喜ぶかは別物なのである。 アックスを賞めようと思って聞き始めたのだけれど、これはちょっと失敗…(笑)であった。こんなこともある…。 写真はまたまたソーリオ。近くでとれる石葺きの屋根が銀色に輝いている。遠くから見ると一層美しいのだけれど、こうして近くで見てみても、やはり光と影の鋭いコントラストの中にこの輝きは深い印象を残す。 生ある内にもう一度ここに出かけたいものだと思っている…。
by schweizer_musik
| 2011-06-21 22:58
| CD試聴記
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