タルティーニの「悪魔のトリル」をオドノポソフの演奏で聞く
作曲者 : TARTINI, Giuseppe 1692-1770 伊
曲名  : ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」(クライスラー編曲)
演奏者 : リカルド・オドノポソフ(vn), ハンス・リヒター=ハーザー(pf)
CD番号 : BAYEL DACAPO/BR 200 004 CD



これが今も手に入るのかどうかわからない。今から二十年以上前、私がはじめてオドノポソフのソロを聞いて好きになった記念の1枚である。ピアノがまたハンス・リヒター=ハーザーというのも嬉しかった。最初、この名前に惹かれて買ったのだけれど、やはり期待に違わぬ演奏だった。
カルル・フレッシュ門下で、かつてのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンマスを務めたほどの人である。1956年から教鞭をとるようになり、録音は多くない。しかし、残された録音の多くは宝物のような存在となっている。
1970年代にはチューリッヒ音楽院でも教えているが、今日のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団など、スイスの主要なオーケストラの団員には彼の弟子が多数いる。
アルゼンチンのロシア移民の子として育った彼が、並外れた才能を示して、ベルリンに留学し、そして階段を一気に駆け上がった1930年代は、生きやすい時代ではなかった。
1944年にカーネギー・ホールでのデビュー・コンサートに成功した後、しばらく活動の中心をアメリカへと移したようであるが、戦後、1950年あたりから活動の拠点をヨーロッパへと移し、盛んに録音を行っている。
彼の録音の大半がこの頃に行われていて、この録音もまたその1つである。
モノラル期であったこと、そして彼がステレオ時代に教育分野に軸足を移してしまったことが、彼の名前が忘れ去られていった要因であったように思う。
しかし、忘れ去るには惜しいヴァイオリニストであった。このタルティーニを聞きながら、再び痛切にそれを思う。
彼の演奏するベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン・ソナタなんて残っていないのだろうか?ものすごく聞きたいのだけれど…。できればこの組み合わせで…。

写真はヴェンゲンの村。スイスの作曲家オネゲルは若い頃、ここに滞在して「夏の牧歌」を作曲したのであった。まさにその世界がここにあると思う。
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by schweizer_musik | 2011-07-15 05:55 | CD試聴記
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