ベートーヴェンのエロイカをフルトヴェングラーの歴史的名盤で聞く
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : 交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」Op.55 (1803-04)
演奏者 : ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : EMI/TOGE-11001



この曲、この演奏、CDで一体何枚持っているのだろう?自分の馬鹿さ加減に愛想も尽きるというところか…。それでもこれと所謂「ウラニアのエロイカ」と呼ばれる1944年冬のライブは出るとつい買ってしまう…。
目下のところ、この最新のEMI盤が最も良い状態であると思う。この盤が出る前はイタリアEMIの全集盤を最高としていたのだけれど…。ちなみにウラニアのエロイカとよばれる1944年盤はOPUS蔵(OPK 7026)で最近は聞いている。
と言っても、そうちょくちょく聞くものでもないのだけれど、日が落ちて、ちょっと涼しくなったところで、ふと聞き始めたら、もうやめられなくなってしまい、つい最後まで1時間近くの間、まんじりともせず、この演奏に釘付けとなってしまった。
1944年の演奏のような激烈な表現はここにはない。それよりもずっと音楽的で細やかな変化の中にとてつもない大きなスケールで演奏が進んで行くのである。
フルトヴェングラーはこの録音ならきっと満足したのではないだろうか?1947年の録音ではちょっと慎重になりすぎたところが感じられ、彼の録音としては今ひとつの結果だっただけに、このウィーン・フィルとの正規録音は会心の出来だったのではないだろうか?
彼のエロイカはこの2つの録音の他にもたくさん聞いている。一体いくつあるのか分からないけれど、それぞれに良いところはあるのだけれど、やはり音が悪く、聞きづらいことは間違いなく、この1952年のEMI盤にはとても敵わないものばかりだ。
ウラニアのエロイカは復刻によってはそこそこ聞けるのが当時としては画期的だと思う。多分ライブではなく、放送用の収録だったのだろう。バランスが良い。
ベルリン・フィルをはじめとする他のライブは一長一短あり、それならば2つの正規録音と、1944年盤を聞くに限ると私は思う。
それにしても、この復刻は良いバランスで、モノラルだけれど充分な解像度で聞かせるので、全く録音上のハンディを感じないほど立体的な響きがしている。(疑似ステではないが…)
第3楽章のトリオでのホルンはもっと輝きがあれば…などと無い物ねだりをしたくなるほど良いバランスになっているのだ。
終楽章はなかなか興奮する。第9の終楽章の冒頭を思わせるような荒々しい前奏を一気呵成に演奏した後、急ブレーキをかけて主題を奏で、変奏がはじまると少しずつ音楽の流れが前へ前へと動き出す。それも少しずつ…。曲もそりように書かれていて、まことに正鵠を射たテンポ設定だと思う。
テンポを変えなければならないということはないが、こうすることで、それぞれの性格がより明確に縁取られ、音楽が大きくうねり出す…。
天国のベートーヴェンもさぞかし喜んだことだろうと思う。深刻ぶりすぎるという批判もあるが、この大作をあっけらかんと演奏するのは無理だ。また古典的な枠組みでこの曲をとらえるのも無理があろう。古典的な交響曲の世界から明らかに逸脱した、新しい世界をベートーヴェンは切り開いたその画期的な、歴史を刻んだ作品なのである。
フルトヴェングラーはその演奏者として不足は全くない。

写真はちょっと気分を変えて、ウィーンのハイリゲンシュタットにある遺書の家。
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by Schweizer_Musik | 2011-08-16 20:08 | CD試聴記
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