ドヴォルザークの序曲「自然の中で」をアンチェルの指揮で聞く
作曲者 : DVOŘÁK, Antonín 1841-1904 チェコ
曲名  : 序曲「自然の中で」Op.91 B.168 (1891)
演奏者 : カレル・アンチェル指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : SUPRAPHON/8 00127



カレル・アンチェルは亡命してから、あまり良い演奏を残せなかったではないだろうか。チェコ時代の録音は総じてバランスが整っていて聞きやすいのだけれど、亡命してから、とこかギスギスしていて今ひとつ感銘が薄かったように思う。
良い指揮者だったと思うだけに、残念なことだ。東西冷戦に翻弄された末であろう。戦争なんてしない方が良いし、プラハの春の事件で戦車に押しつぶされた表現の自由、言論の自由など、思い起こせば色々とある。
まあ、今日でもどこの国とは言わないが、歴史さえ自分たちの都合の良いものしか教えず、今もそうした典型であり続けている国などに本当に芸術や文化が育つかどうか、甚だ疑問を禁じ得ない。
カレル・アンチェルの全ての録音を聞いたわけではないが、私が聞いた中で最も優れた演奏はこの序曲集である。1962年頃の録音ということであるが、ドヴォルザーク後期の作品で、どれもドヴォルザークらしい素朴で伸びやかなメロディーと、バランスの良いオーケストレーションに色づけされた傑作揃いである。中でも「謝肉祭」や「わが家」とともに、この作品はよく演奏されるので、ご存じの方も多いのではないか。
ただ、「新世界」や「アメリカ」チェロ協奏曲のようなポピュラーな人気を勝ち得ているとは言い難く、作品の内容を思えば、もっと聞かれてしかるべきだ。
これらの作品をアンチェルは実に伸びやかに歌わせている。こうした優れた演奏で聞くと、曲の魅力が一杯聞こえてくるから面白い。序曲「自然の中で」という作品の民族色はそれほど濃はない。ユニバーサル・デザインのドヴォルザークとでも言えるだろうが、それが逆に人気の出ない理由だとしたら気の毒だ。「新世界」や「アメリカ」のようにペンタトニックを使いまくった民謡調(どこの国の民謡なのかはよくわからないが…)でないが、これまた最良のドヴォルザークの世界であることだけは間違いないところである。

写真は顰蹙を背に、更に続けてダヴォスの写真を…。
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by Schweizer_Musik | 2011-08-16 23:20 | CD試聴記
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