ベートーヴェンの交響曲第7番をライナー指揮で「見る」
タイトル(or 曲名) : ベートーヴェン/交響曲 第7番 イ長調 Op.92 (1811-12)
出演者 : フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団
DVD番号他 :VAI/4237



指揮棒がほとんど動かないなんていう神話は、これを見ると吹っ飛んでしまう。彼の指揮は無駄な動きがないというだけなのだ。クレッシェンドを左手で指示しなくても、書いてあることを楽員が演奏すれば良しとするならば、この指揮は極めて合理的だし、無駄がない。オケの楽員たちにとってみれば、不要な指示がないので、アンサンブルに集中しやすいということがあるのではないだろうか。
1954年の収録だが、クライバーンの演奏と同等のモノクロ映像である。音もモノラルで、解像度もまっそこそこと言ったところである。
ただ、これはフリッツ・ライナーの指揮が見られるという貴重なものなので、これを買う人はそんなことを気にする人はいないに違いない。
かつて、ベートーヴェンの第7番と言えば、私にとってフリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団の演奏だった。RCAの廉価盤で、この曲をどれだけ聞いたことか…。
フルトヴェングラーに夢中になったのはその後のことで、この曲に関してはフリッツ・ライナーの演奏がすり込みである。
だから、この映像の演奏が、私の頭の中で、昔聞いた音と完全に一致していくのには驚かざるを得ない。レコードの録音とは違うのだけれど、全くテンポの動きなどから表現、ちょっとした間のとりかたに至るまで、私の記憶の中にあるフリッツ・ライナーの演奏そのままなのだ。
彼は、演奏する度に違ったベートーヴェンを演奏しなかったということなのだろう。当たり前のことのようで、これが当たり前でないのだ。
評価する演奏家と、全く合わなかった演奏家…。彼ほどこれが明確に分かれた指揮者も珍しい。あるオケでは、楽員と対立していたために、退任のフェアウェル・パーティーにただの一人の楽員も来なかったということがあったりしたそうだ。
しかし、一方で彼を高く評価した人たちもいる。ヤーノシュ・シュタルケルやジュリアス・ベイカーなどの演奏家たちは彼の最後の録音となったハイドンの交響曲にオーケストラ・メンバーとして参加している。先ほど聞いていたクライバーンも彼と音楽の方向がピタリと合った人たちの一人である。
そんな好き嫌いのはっきりしていたフリッツ・ライナーが、眼光をとばして、身振りの大きな、それでいて無駄のない指揮で、スタイリッシュなベートーヴェンを演奏している。
これは実に良い演奏である。あんまり良かったので、今アンコールをして二度目を見ているところだが、彼の演奏で聞き込んだ曲であり、その表現が記憶とピタリと合って、私にはなんとも気持ちの良い演奏であった。
しかし、それにしてもこの曲の第2楽章。どうやって思いついたのだろう。とても人間業とは思えないスコアだ!!フリッツ・ライナーで聞くと、指揮者の個性より、音楽の良さがまず聞こえてくる気がする。それが私には大変好ましい点である。
古い映像なので、誰にでもお薦めできないけれど、なかなか良いものだ。

写真は引き続きコンスタンツの街角から。
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by Schweizer_Musik | 2011-09-02 23:45 | DVD/スカパー!視聴記
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