シューベルトのピアノ・ソナタ第18番をレフの演奏で聞く
c0042908_8214953.jpg作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名  : ピアノ・ソナタ 第18番「幻想」ト長調 D.894 (1826)
演奏者 : リヴィア・レフ(pf)
CD番号 : PALEXA/CD-0529



1916年生まれであるが、今もご健在であるらしい「話題の」ギリシャ出身の女流ピアニスト。今も演奏活動をしているかどうかは知らないが、本当はもっと聞きたいと願っているのだが、CDが少なく私にとって幻の存在でありつづけている。ドビュッシーの前奏曲など、メンデルスゾーンの無言歌、ショパンの夜想曲、そしてこのリサイタル盤が私の知る彼女の全てであるが、なんという素晴らしさだろう。
この録音は2000年に行われたリサイタルのライブである。ペダルの音が盛大に入っているがマイクの位置の問題らしい。が、そんなことなどどうでも良い。この演奏の美しさは尋常のものではない。
このソナタはシューベルトの作品の中でも絶美の傑作なのだが、84才のレフは愛おしむように、シューベルトの音楽をゆったりとその美しいタッチで奏でるのである。
第1楽章から聞き手はその軽妙なタッチに釘付けになることだろう。17分もある第1楽章が、私にはあっという間の出来事だった。それにしてもよくこんな動機でこんな美しい音楽を作れるものだ。シューベルトの天才は、その辺の棒きれでも素晴らしい木彫にして見せるのだ。
この点で彼はベートーヴェンに匹敵する存在であった。構成力がないなどと、何もわからない連中が書き立てているけれど、ベートーヴェンとは違った原理で書いているから、同列に比べるのは土台無理な話なのである。「天国的な長さ」ともよく言われるが、確かに彼の歌は器楽ではこの位の長さを必要としていた。そして表現しているものと、構造の間に全く齟齬が聞かれない。これはベートーヴェンの作品やブラームス、シューマンといった超一流の作曲家たちの作品に共通したもので、この曲の長さもシューベルトの必要としていたものだった。
性急に展開していくのではなく、色合いが微妙に変化していくように展開していくそれは剣の達人がすっと相手と間合いをせばめて行くように自然なのだ。
そしてレフはその自然な流れの中でこの曲を聞かせる。あまりに自然に楽章が進んで行き、曲が終わったことにすら気がつかないほどだ。
シューベルトの音楽の持つ美しさと彼女の語り口の自然さとが相まって、この録音は大変な聞き物となっている。
まだお聞きでないなら、ぜひ一度ご賞味あれ!!

写真はグルッチュアルプとミューレンを結ぶ小さな高原鉄道…。車両はわずか2両。時速30キロほどで走るこの鉄道の「売り」は何と言ってもこの景色である。この鉄道にまた乗りたいものだ。20年前にはじめてこの鉄道に乗って以来、通い続けている私だが、今もこれに乗る時は胸がときめく。
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by Schweizer_Musik | 2011-11-01 08:48 | CD試聴記
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