バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ヘ短調を聞く
バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ヘ短調を聞く_c0042908_20374023.jpg作曲者 : BACH, Johann Sebastian 1685-1750 独
曲名  : ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ヘ短調 BWV 1018 (1717-23)
演奏者 : アルチュール・グリュミオー(vn), エジダ・ジョルダーニ・サルトリ(cemb)
CD番号 : DECCA/UCCD-9825〜6



この高貴な語り口の悲しみ溢れる音楽を聞いて、なんとも言えない気持ちになってしまった。グリュミオーの演奏はいつもながら完璧で美しい。清潔で古楽器系の演奏のような押しつけがましさもなく、楽譜を自然に向かい、そこから深く読み取り、奏でる…。
第1楽章はチェンバロが細かい動きを担当し、ヴァイオリンは長い音符で朗々と歌い上げるものだが、この演奏で聞くと、品位の高さを痛感する。
第2楽章のアレグロはヴァイオリンとチェンバロの丁々発止のやりとりが印象的な音楽。とは言え、グリュミオーとサルトリの出す音が雑になることなど全くなく、磨き上げられた響きとアンサンブルで活気のある音楽を聞くことができる。アンサンブルとはこうしたやりとりがあって面白くなる。
第3楽章はそれまで全く出てこなかったダブルストップでのヴァイオリンによる伴奏にのって、チェンバロが細かな動きをしていく、ちょっと変わった形で聞かせてくれる。このダブルストップでヴァイオリンが2本のようにさえ聞こえるほどで、ダブルとは言え、グリュミオーが弾くとこんなに響きが美しいのである。普通のヴァイオリニストではちょっとこうはいかない…。
終楽章は半音階の動きが印象的で、Vivaceの速いテンポではあるが、背景に絶望感、大きな悲劇を感じさせるスケールも持っている。
「半音階的幻想曲とフーガ」ほど外面的な効果ではなく、音楽は大変内面的に感じる。それねグリュミオーとサルトリの演奏故なのかもしれない。
再発されたばかりなので、まだお聞きでないなら、ぜひ1度聞いてみられてはいかがだろうか?

写真は夏にも掲載したものであるが、晩秋の風景はまた違った趣があって実によろしい。
バッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ヘ短調を聞く_c0042908_21165282.jpg

by Schweizer_Musik | 2011-11-19 21:17 | CD試聴記
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