細川俊夫氏の「雲と光」を聞く
c0042908_21152939.jpg作曲者 : HOSOKAWA, Toshio (細川俊夫) 1955- 日本
曲名  : 雲と光 "Cloud And Light" 〜 笙とオーケストラのための) (2008)
演奏者 : 宮田まゆみ(笙), アレクサンダー・リープライヒ指揮 ミュンヘン室内管弦楽団
CD番号 : ECM/476 3938



細川先生の最近の作品で、宮田まゆみの笙と寡黙な室内管弦楽が静寂の中から悠久の時を刻むが如き作品である。これはもう細川俊夫先生しか書けない世界である。真似をしてもどうしようもない彼だけの世界だ。
2008年6月にザールブリュッケンで初演されたこの作品。この年のルツェルンでは先生は音楽祭から表彰され、私もチューリッヒ・トーンハレでソナチネの初演があったので、娘とルツェルンで先生にお会いしたことを思い出す。その前に尺八の演奏会で先生にお目にかかっているが、あの頃にちょうどこの曲が出来ていたということになる。
ザールブリュッケンで行われたムーヴマン現代音楽祭2008で細川先生はコンポーザー・レジデンスとしてこの作品の初演とともにいくつかの作品が演奏されているし、その年のパシフィック・ミュージック・フェスティバルでメルクル指揮でこの作品は日本初演されている。
20分あまりの演奏時間の作品で、現代の作品としては大作に入る。笙の優しくも幽玄なる響きは、中国の荒々しい笙の音楽とはまた違って高貴な世界を感じるものである。
曲は笙と弦5部、トランペット、トロンボーン各1にホルンが4という編成である。作曲者は曲について次のように述べておられる。

仏の来仰図にインスピレーションを得、笙は「光」を、オーケストラは「雲」をイメージしつつ、それらが次第に地上に近づいて来る光景を描こうとした

曲は大まかに3つの部分から出来ている。最初の部分は「空に漂う雲」で静かな音響が果てしもなく続いている部分で、エモーショナルな静寂が描かれる。続いて動的な「暗雲と小さな嵐」が入り、そして最後に「浄化」である。
最近の細川俊夫氏によく出てくるテーマがここにもある。笙というソリストは管弦楽の1部となり、永遠なる光となって降り注ぐ。それは全く協奏曲らしくないが、これが作曲者の意図であったのだろう。
どこからどこまでも細川先生の音楽である。いや全くこの強い個性と表現力(決して押しつけがましくなく、先生のおさしいお話の仕方そのもののような世界が広がっている。
いや素晴らしいものだ。

宮田まゆみさんという日本の第一人者をソリストに得たこともあろうが、アレクサンダー・リープライヒ指揮 ミュンヘン室内管弦楽団が作曲者の意図を理解し、誠心誠意、音楽に没入しているのもあろのだろう。今年1番の収穫であった。今日、帰ってからすでに3度、もう1時間あまり、この曲を繰り返し聞いているが、全く飽きるということがない。
しかし、当たり前のことだけれど、どこをとってもその人の音になるなんて、凄い人だと思う。
現代音楽にアレルギーのな人には、絶対お薦めの一枚。他の曲も良いものばかり。興味深いのは日本の「さくらさくら」を笙のソロ作品にしているものだ。細川先生の手にかかると、この有名すぎるメロディーが細川節になる。いや全く凄いものだと、つくづく思った。

写真はその細川俊夫先生とお会いしたルツェルンの新しいホールから旧市街を撮ったもの。窓が大きな名絵のようであった。この美しさをある種の軽妙さとしなやかさが現代建築で表現されていることに、ただただ驚きを禁じ得ないのである。素晴らしいホールだと思う。
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by Schweizer_Musik | 2011-12-01 23:30 | CD試聴記
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