作曲者 : HAYDN, Michael 1737-1806 オーストリア
曲名 : レクイエム ハ短調 "'Pro Defuncto Archiepiscopo Sigismundo" MH 154 (1771) 演奏者 : ロバート・キング指揮 キングス・コンソート CD番号 : hyperion/CDA67510 いわゆる大司教ジークムントのためのレクイエムとして知られる作品であるが、誰のためかはともかく、この作品の持つ価値は計り知れないものがある。(ハ短調で書かれたレクイエムはもう1曲あるので、混同されないように…) この曲は、ごく最近(と言っても数年前で、このブログをはじめるちょっと前だったように思う)聞いて、その素晴らしさに驚嘆した曲である。 モーツァルトの後任として、ザルツブルクで大司教に仕えて同地で亡くなった彼は、よく知られるようにパパ・ハイドン(フランツ・ヨーゼフ・ハイドン)の弟である。この兄弟に神は惜しげもなく音楽の才を与えたようで、私に言わせれば二人は全く同格の天才であった。 フランツ・ヨーゼフ・ハイドンもミヒャエル・ハイドンも古典派の枠組みの中に居た人だが、兄の方がずっと革新的で、弟の方が保守的で、バロックやマンハイム楽派の影響を色濃く残していると思う。そしてそれが、ザルツブルクの水に合っていたのではないかと推測する。モーツァルトのような革新的な人物にはザルツブルクの田舎ではとてもやってられなかっただろうが…。 これは「優劣」ではなく「違い」だと思う。そしてその違いが彼の評価をマイナーなものにしているとしたら、惜しいことだと思う。 第1曲 入祭唱 Introitusの冒頭は、ペルゴレージの「スターバト・マーテル」によく似ている。特にベースのウォーキング・ベースのパターンは全く同じであるが、その後の展開は、モーツァルトのレクイエムにも大変似ている。というか、モーツァルトがこの作品に影響を受けたとも言えるかも知れない。 シューベルトにはレクイエムはないけれど、ミヒャエル・ハイドンの数多く残したミサ曲を聞くと、シューベルトなどに彼が残した影響の大きさに驚かされる。 また彼はカール・マリア・フォン・ウェーバーの先生としても知られている。ウェーバーの若き日の作品はミヒャエル・ハイドンの指導の下で書かれたものが多く、彼を過小評価しすぎると、色んなことが見えなくなってしまうことの例証とも言えよう。 ともかく、演奏時間40分に及ぶ、この作品が当時のミヒャエル・ハイドンの全力投球の結果であり、楽想から湧きでるインスピレーションの豊かさには驚愕以外にない。 ロバート・キング指揮 キングス・コンソートの面々の演奏も、過度な例証主義に陥ることなく、実に音楽的な演奏で魅了する。 これは本当に良い録音である。一度みなさんもいかが? 写真はホーエン・ザルツブルク城ではありません、念のため…(笑)。ザルツブルクにあんなに行っているのに写真がほとんどないのは、雨の中を(いつもザルツブルクは雨に降られてばかりだった…)歩き回っていて、写真を撮る暇が無かったことによるし、行ったことは数度に及んでも滞在はいつもザンクト・ウォルフガングだったことも原因だ。 いつかまた行きたいとは思うが、行けるかなぁ…。したがって写真はウンター・エンガディンのシュクオル近くのタラスプ城。但し、この城に私は行ったことはない。写真はレーテッシュ鉄道の列車から撮ったもの。でもなかなかのビュー・ポイントをとらえていると思いませんか?
by Schweizer_Musik
| 2011-12-11 17:58
| CD試聴記
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