シューベルトのスターバト・マーテル ト短調を聞く
シューベルトのスターバト・マーテル ト短調を聞く_c0042908_19194228.jpg作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名  : スターバト・マーテル "Stabat Mater" ト短調 D.175 (1815)
演奏者 : ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮 バイエルン放送交響楽団, 合唱団(ヨーゼフ・シュミットフーバー合唱指揮), エルマー・シュロター(org)
CD番号 : EMI/7243 5 86011 2 1



シューベルトのスターバト・マーテルにはこの翌年に書かれたヘ短調の作品の方が知られているが、このト短調で書かれた作品は18才のシューベルト青年が書いた最初の?スターバト・マーテルである。
他にもこの曲のCDが出ているのかは知らないけれど、若書きだからと言って決して侮ってはならないのがシューベルトである。彼の子供の頃の作品は全く残っておらず、1810年頃から以降の作品が残されていて、それが登場からすでに成熟した作曲家として現れたのだから、この人はちょっと特殊な人と言ってよいかも知れない。
ましてや、その作曲家として活動をはじめて5年も経っているこの作品は2曲の交響曲を試作し、「糸を紡ぐグレートヒェン」などの歌曲も書いている青年作曲家となっていたのだから、習作程度と馬鹿にしてはならないのである。
キリストを失った聖母マリアの嘆きを、青年シューベルトは複雑な線と響きの中に巧みに表現している。歌詞そのものがそう長いものではないので、ここでの彼は歌曲を書くような態度でこの有名な歌詞を6分ほどの短い作品にまとめ上げている。
まだベルゴレージなどの名作を知らなかったのだろうか。その翌年にヘ短調で伝統的な作法によるスターバト・マーテルを、シューベルトらしく更に深めて書き上げているのだから、この作品が忘れられていても仕方がないのかも知れない。
しかし、私はこの曲にも深い愛着を感じる。この霊感に満ちた歌詞を前に、夢中になったメロディーを紡ぎ出していたシューベルト青年の姿が、曲を通して透けて見えるような気がするからである。
実に良い作品だと思う。こうした作品の上に更に進歩していくのだけれど、その進歩の度合いが破格というかなんというか…。
天才とはなんとも凄いものである。
サヴァリッシュの指揮するバイエルン放送交響楽団と合唱団の演奏はまことに素晴らしく、安心してお薦めできる名演と言えよう。

写真はウィーンのシュテファン大聖堂。あんなに長く滞在し、それも二度も訪れたウィーンの写真がほとんどないというのも、いかに夢中になって見て回っていたかということと、当時、私はあまり町を写真におさめることに興味がなかったことの結果である。この写真は、わずかに残っているウィーンのそれらしい写真の1つ。
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by Schweizer_Musik | 2011-12-11 19:44 | CD試聴記
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