ラヴェルの「鏡」をハースの演奏で聞く
ラヴェルの「鏡」をハースの演奏で聞く_c0042908_21302825.jpg作曲者 : RAVEL, Maurice 1875-1937 仏
曲名  : 鏡 "Mirrors" M.43 (1904-05)
演奏者 : ウェルナー・ハース(pf)
CD番号 : PHILIPS/UCCP-3391




一ヶ月ほど前にクーパーの演奏について書いたばかりであるが(こちら)今度はウェルナー・ハースの演奏。この人は45才の時に交通事故で亡くなったため、録音がそう多くなく、更に中心となっていたレパートリーがドビュッシーとラヴェルだったせいで(無論、他の作品も弾いているだろうが…)忘れられるのが早かった。
私が音楽を聞き始めた頃にはもう廉価盤などでお目にかかり、その内それもなくなった…。
CD時代に入ってこうした音源も復活してくれて有り難い。
「鏡」は「ガスパール」と共に、ピアニストの力量を知るのに都合の良い曲で、これをこんなにもきらめく響きで演奏した彼は、やはり本物のピアニスト(変な言葉だ…笑)だったと思う。
「蛾」を速めのテンポでファンタジックに歌い上げているあたりは見事だ。この曲をゆったりとしたテンペでやると、どうも大きな蝶がふわふわと飛んでいるみたいで、今ひとつピンとこないのだけれど、ハースの演奏は確かに「蛾」が鱗粉をまき散らしながら飛ぶ雰囲気が味わえる。
「悲しい鳥」では逆に遅めのテンポで演奏し、曲の奥深さを感じさせる。クーパーは寂寥感と艶っぽさが同居した不思議な雰囲気の演奏だったけれど、深さ、深淵は感じさせてくれなかった。ハースはその深い淵を彷徨うような絶望感がある。どちらが正しいとかいうものではないが、ハースの演奏には若さとともに曲への深い踏み込みが感じられて説得力抜群だ。
第3曲の「海原の小舟」は反転、速いテンポで歌い上げる。ふと思えば、クロスリーなどのゆったりとしたテンポでは、小舟ではなく中型の汽船のような雰囲気だ。けれど、波に遊ばれる小舟ののイメージはこのハースの演奏からとてもよく伝わって来る。直裁な解釈であるけれど、強い説得力のある演奏だ。
有名な「道化師の朝の歌」はアクセントを効かせたスケルツァンドな演奏で実に楽しいし、最後の「鐘の谷」の描写性も見事に再現している。
今聞ける、最も優れた「鏡」の演奏のひとつだと思う。iTune-storeで、ダウンロードしたもの。お薦めですよ。(但し、2曲の協奏曲はオケが酷いものだったので、とても聞けた代物ではなかったけれど…)

写真はメールスブルクの町の様子。
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by Schweizer_Musik | 2011-12-19 21:37 | CD試聴記
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