ベンジャミンのヴィオラ協奏曲を聞く
ベンジャミンのヴィオラ協奏曲を聞く_c0042908_8475129.jpg作曲者 : BENJAMIN, Arthur 1893-1960 オーストラリア→英
曲名  : ヴィオラと管弦楽のための悲歌, ワルツとトッカータ(ヴィオラ協奏曲) (1943)
演奏者 : サラ=ジェーン・ブラッドリー(va), ジョン・ギボンズ指揮 ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
CD番号 : DUTTON/CDLX-7279



ジャマイカン・ルンバの誰の演奏だったか忘れたけれど、ライナー・ノートで作曲者のベンジャミンについて経歴不詳と書かれていたことがあった。もうずいぶん前のことであるが、今日のようにインターネットで簡単に検索して調べることができる便利な時代ではなく、情報が得られず、どういう作曲家なのか分からなかった。
で、この人がオーストラリアの作曲家で、交響曲や様々な協奏曲など、オーケストラ作品をはじめ本格的なクラシカルな作曲家であったことを理解し、それらの業績を聞くことができるようになり、この作曲家についてあまりに無知だったことを思い知るのである。
このヴィオラ協奏曲は1943年、戦争中の作品であるが、優雅さと一遍のペーソスの併せ持つなかなかの傑作ではないだろうか?生まれた時代が時代なので、あまり現代的な技法ではなく、平易な語法で書かれている。それはベンジャミンの多くの作品と共通している。
しかし、保守的すぎず、適度に彼なりの新しい響き、自分のスタイルを持っていて、私はとても楽しく聞くことができた。
「悲歌, ワルツとトッカータ」が3つの楽章に振り分けられ、冒頭の楽章が「悲歌」であるが、痛切な音楽というより、どこか洒落た響きを伴っていて、実に魅力的な曲のはじまりであった。
続くワルツが傾向として似ていて、ちょっと性格の対比に欠けるところはあるが、終楽章で力感ある表現が試みられていて、なかなかに聞かせる。
作風としては新古典主義の範疇にあるのは、世代的には当然のことであろう。フランス近代の作曲家たちから少なからず影響を受けているが、ブラームスを崇拝し、それに繋がるイギリスの作曲 チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードの最後の弟子でもあった。
王立音楽大学ピアノ科教授であった彼の門下には、ベンジャミン・ブリテンなどの名前もあることを付記しておく。

この奏者のサラ=ジェーン・ブラッドリー(Sarah-Jane Bradley)ははじめて聞くけれど(彼女のHPはこちら)、まずまずの出来映えで、この未知の作品の紹介者として十分な職責を果たしていると言えよう。指揮者のジョン・ギボンズはイギリスの作曲家・指揮者・ピアニストである。詳しくはこちらをどうぞ。

写真はよく似た写真を何度か掲載してしまったけれど、私の大好きなチューリッヒ、リンデンホフの夕暮れの風景から…。
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by Schweizer_Musik | 2011-12-24 09:19 | CD試聴記
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