クラのピアノ五重奏曲を聞く
クラのピアノ五重奏曲を聞く_c0042908_18593699.jpg作曲者 : CRAS, Jean Emile Paul 1879-1932 仏
曲名  : ピアノ五重奏曲 (1922)
演奏者 : アラン・ジャゴン(pf), ルーヴィニュイ弦楽四重奏団【フィリッペ・コッホ(vn), ファビアン・ペルディチッツィ(vn), イラン・シュナイダー(va), アレクサンドル・フラムチン(vc)】
CD番号 : Timpani/1C1134



大分前に聞いて、ブギヴギピアノ風の出だしに驚いたことを憶えている。多分、それを使ったのだろう。和声的な細やかさと複雑さと決別する意志を最初に表明した形であるが、それ以後はフランス近代の響きへと収斂されていくわけで、せっかくだったらもっと徹底すれば良いのになどと、最初聞いた時思ったけれど、今聞くと、まっこれでも良いかと思えて来たりして、自分も結構いい加減だなぁなどと思ったり…(笑)。
それにしても、クラなんて知らないという方は、是非一度聞いて欲しいものだ。ほぼ独学で作曲を習得し、二十歳で海軍学校を卒業してから、アンリ・デュパルクと運命的な出会いをし、彼を生涯の師とした作曲家である。とは言っても、三ヶ月ほどデュパルクについただけであった。しかし、デュパルクはクラを高く評価し、「我が魂を継ぐ者」とまで述べたとか…。
一方で航海技術の発展ににも貢献していて、航海用機器の発明も手がけたというから、一体どういう人だったのだろうと、ただただ驚くばかりだ。
本業はあくまで軍人であり、海軍学校で教鞭を執る傍ら、作曲を続けたという。
53才で亡くなったのは早すぎたが、人の数倍の人生を歩んだ人なのだろう。彼の作品は、デュパルクのように潔癖なまでの完璧主義ではなかったらしく、かなりの数が残されているし、ピアノ協奏曲やオペラまであるのだから、天は二物を与えたもうたとしか言いようがなく、羨ましいことである。
この作品のどこかどこかおおらかで、伸びやかな味わいは、師のデュパルクのビリビリした世界とはまた違う世界だと思うし、彼の代表作としてこの曲が取り上げられるのも頷ける傑作だと、ようやく思い始めたところ…(なんとも心許ない…笑)。
ルクセンブルクのオケの主席奏者たちが集まってのルーヴィニュイ弦楽四重奏団は大変上手いし、アラン・ジャゴンのピアノも満足できる出来映えで、これは買って損のない一枚。
印象派の影響も受けているけれど、よりロマンチックで、大らかな作風が、クラの魅力なのだとようやく気付けた次第。

写真はバーゼルの市役所前の市。
クラのピアノ五重奏曲を聞く_c0042908_19211175.jpg

by Schweizer_Musik | 2012-01-23 19:21 | CD試聴記
<< デュボアのピアノ五重奏曲を聞く モーツァルトの交響曲第41番を... >>