シェーンベルクの月に憑かれたピエロをクレオ・レーン他で聞く
シェーンベルクの月に憑かれたピエロをクレオ・レーン他で聞く_c0042908_23113547.jpg作曲者 : SCHÖNBERG, Arnold 1874-1951 オーストリア→米
曲名  : 月に憑かれたピエロ Op.21 (アルベール・ジロー詩) (1912)
演奏者 : クレオ・レーン(vo), エルガー・ハワース指揮ナッシュ・アンサンブル【マーシャ・クレイフォード(vn/va), クリストファー・ヴァン・カンベン(vc), ジュディス・ピアース(fl/picco), アントニー・ペイ(cl), クリフォード・ベンソン(pf)】
CD番号 : TOWER-RECORDS(BMG)/TWCL-3026



これが出た時は、大いに話題となったものだ。あのクレオ・レーンがなんとよりにもよってシェーンベルクの「ピエロ・リュネール」を歌うとは、誰もが驚いたものである。
この表現主義の最大の成果とも言える傑作は1912年の春から初夏にかけて作曲され、秋、10月16日にベルリンで初演された。シェーンベルクはこの曲の初演に40回ものリハーサルをして臨んだそうで、おそらくは完璧な形で初演を迎えたに違いない。
この作品は、シュブレッヒシュティンメ(Sprechstimme)という、朗読と歌唱の中間のような「歌」とフルート(ピッコロ持ち替え)、A管クラリネット(バス・クラリネット持ち替え)、ヴァイオリン(ヴィオラ持ち替え)とチェロとピアノという六人の演奏家のために書かれている。
調性は一貫してない。冒頭から同じ音、調性を感じさせる一切を避けるように書かれていて、ガラス細工のように繊細なスコアとなっている。
アルベール・ジローはベルギーの詩人で、原詩はフランス語で書かれている。それをオットー・エーリヒ・ハルトレーベンが独訳したものから21の詩を選んで作曲されたのである。
これは一貫して慎重に書かれた無調作品で、全部で3つの部分から出来ている。この詩から作曲者は歌い手(語り手)をコロンビーナと解釈していると思われる。
ピアニシモからフォルテシモまで小編成ながら、大変幅広いダイナミック・レンジで付曲されたそれは、強い意志を感じさせる。
詩を柴田南雄先生が訳されていて、それがネットにあったので、ご参考にどうぞ。(こちら)

それにしても、クレオ・レーンの歌のなんと饒舌なことか!!エルガー・ハワース指揮のナッシュ・アンサンブル(昔、ロンドンで彼らの演奏会を聞いたことがある。上手かったなぁ…)は完璧と言っても良いだろう。
タワー・レコードの企画でこの名盤が復活した時は本当に嬉しかった。学生時代に聞き込んだものであったから、懐かしい昔の恋人にあったような気持ちであった(ちょっとオーバーです…笑)。
今、再び聞きながら、その再会の時を思い出す。1日、こんな不健康な音楽わ聞いて飽きなかったのであるから…。
まだ手に入ることを祈ろう。
ジャケット写真は、その昔のものがあったので、ちょっと拝借して掲示させていただいた。タワーからの再発はこれが味気ないものに変わっていて、ちと幻滅したものだ。権利問題などがあって使えなかったのかも知れないが、残念至極であった。

写真は夜のチューリッヒ旧市街。8月末の土曜だっか日曜だったかをチューリッヒ市民は、こうして行く夏をどんちゃん騒ぎをして送るのが習慣のようである。
シェーンベルクの月に憑かれたピエロをクレオ・レーン他で聞く_c0042908_23441725.jpg

by Schweizer_Musik | 2012-02-07 23:44 | CD試聴記
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