カウフマン(vn)による「和声と創意への試み」Op.9 **
世界最初のヴィヴァルディの「四季」の録音がナクソスから復刻されていたので、前掲のショスタコーヴィチなどと一緒に購入して聞き終えたところ。
コンサート・ホール原盤で、「和声と創意への試み」Op.9が全曲録音され、更に珍しい2つのヴァイオリンのための協奏曲Rv.513が収められていて、「四季」の4曲がニューヨークで、他はスイスのチューリッヒで録音されている。
ヴァイオリンはルイス・カウフマン。1905年ポーランドに生まれ、アメリカに渡り1928年にニューヨークでデビューし、ロスアンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団のソリストとして長く活躍したヴァイオリニストで、映画のサウンドトラックのヴァイオリン・ソロをよくやっていたという。映画「風と共に去りぬ」のヴァイオリン・ソロも彼であった。コープランドなどともよく共演していたし、コープランドの「ホーダウン」をヴァイオリン用に作曲者が編曲したものを録音していたが、あれなどは大したものだった。ラーションやヴォーン=ウィリアムズのヴァイオリン協奏曲をいれたものが以前出ていたが、今はどうだろう?忘れられたヴァイオリニストの一人に数えられるだろう。「四季」はこのナクソス初めてその存在を知った次第だが、確かヴォックスに数多い録音があったと思う。
アメリカ録音の「四季」は通奏低音にオルガンを使っていて、聞き慣れた響きと随分違うので、ちょっと違和感を感じた。しかしテンポなどはよく知ったもので、イ・ムジチ合奏団のものなどとそう大きく違わないテンポ設定だ。アーヨのソロで録音したイ・ムジチの録音などに似たところもあるが、随所にポルタメントが多用され、少々時代を感じるところもある。
まだイ・ムジチの録音はなく、カール・ミュンヒンガーやレナート・ファザーノなどの指揮による録音もなく、バロックの音楽ではバッハ以外はわずかにヘンデルのいくつかが演奏されるだけという時代に行われたこの録音は、カウフマンによるパイオニア的な仕事であったことは間違いない。
アメリカ録音の「四季」は、その歴史的な意義を持っているとは言え、今となっては冴えない演奏であると言えよう。ヴァイオリンのカウフマンはなかなかの腕前であるとは言え、今日こんなにも多くの演奏を聞いてきた耳には魅力は薄い。カウフマンの抒情的なソロを支える通奏低音がオルガンであるのは面白くないこともないのだが、やはり重すぎる印象は否めない。スウォボダの指揮は丁寧ではあるが、オケが雑でバロック音楽黎明期の頃の録音だとつくづく思わせられる。
ところで、この話題の四季が終わって残りの8曲+1曲はスイスで録音されていてこちらはなかなかの出来である。ダヒンデン(ヴィンタートゥーア・コレギウム・ムジクムのヴァイオリン奏者)の指揮もスウォボダよりも数段上だと思う。丁寧な仕上がりは、この曲の魅力をよく伝えているが、何しろ控えめにオルガンでなくチェンバロで演奏されているのはありがたい。チェンバロが誰かは知らないが、この水準であれば録音のことを差し引いても十分今日でも価値があると思う。
第5番「海の嵐」からのチューリッヒ録音は、弦の王国であったヴィンタートゥーアの面目躍如たる演奏である。加えられたRv.513の2つのヴァイオリンのための協奏曲ではペーター・リバールが第2ヴァイオリンを担当しているが、この名ヴァイオリニストの素晴らしい記録の一つとなろう。
録音も1947年のアメリカでの録音はいささか聞きにくいところもあるが、1950年夏の録音であるチューリッヒでの録音は随分聞きやすくなっていて、この数年の録音技術の発達は大きかったことをうかがわせる。今となってはアーヨとイ・ムジチ合奏団の録音などが出ているので、今更これを推薦するのは無理があろう。**としたい。

NAXOS/8.110297〜98
by Schweizer_Musik | 2005-05-21 12:17 | CD試聴記
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