シュニトケ室内楽集 ***
シュニトケが亡くなって今年の八月で七年になる。この不思議な作曲家はバロック風に書いたり、色んな作曲家の旋律を借用しては厳格なアカデミズムを皮肉っているのか、わからないようなところがある、それでいてとてつもなく魅力にあふれた作曲家であった。
1953年の作品であるヴァイオリン独奏のためのフーガは全くバロック風の曲。この時代にこんな音楽を書いていたなんて・・・。それも社会主義のソビエトで。スターリンが亡くなったのはこの年だったはずだ。まだ雪解けムードではなかったはずであるから、バロック風の作品は先鋭化する精神のその隠れ蓑だったのかもしれない。
ヴァイオリンは名手マルク・ルボツキー。彼はBISレーベルにエストニアの作曲家トゥビンのヴァイオリン協奏曲の録音をしていたが、あれは名演だった。このCDで彼の溌剌とした響きに再び出会うことができた。
続いて1988年の「チェロ独奏のための鳴り響く文字」は、(音の手紙と訳されていたのではなかったかなぁ・・・)は現代風の作品でアレクサンダー・イヴァシュキンが演奏している。もう少しのめり込んで演奏してほしいところもある。ちょっと冷静すぎるような・・・。表現の幅が狭く、あまり説得力がないのは残念。
1976年のピアノ五重奏曲ではイリーナ・シュニトケがピアノを弾き、ルボツキーをはじめ素晴らしい演奏が展開される。ショスタコーヴィチの追悼に書かれたというこの作品は全体に深い悲しみに満ちており、この奏者たちの自分のことののように自信に満ちあふれた演奏ではもう一言も出てこない。終楽章の訥々としたピアノの語りかけるようなメロディーに導かれて 弱音器つきのヴァイオリンがむせび泣くような響きが流れ始めるあたりは、この作曲家のイマジネーションの深さに完全に参ってしまった。歪なワルツのリズムとひきずるようなメロディーの対比。ああ凄い曲だ。そして凄い演奏だ!!
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲である1979年作曲の「静寂の音楽」は同傾向の曲ながら、より響きとしては切りつめられた中から、深い祈りの歌を編み出しているのが凄い。
弦楽三重奏曲は2楽章からなる1985年の作品で、25分あまりかかる大作。ルボツキーをはじめとする面々は、情感豊かにこの作品を演奏している。調性は残っているので、現代音楽アレルギーの人にも薦められる。エネルギッシュな第1楽章に対して、悲しみと祈りに溢れた第2楽章。
交響曲や合唱作品といった大規模な音楽ばかりという印象のシュニトケだが、室内楽もまた良い作品があるものだ。ぜひ一聴をお薦めしたい。

NAXOS/8.554728
by Schweizer_Musik | 2005-05-21 13:03 | CD試聴記
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