ワルター指揮コロンビア交響楽団のマーラーの「巨人」*****(特薦)
一日疲れ果てて帰り、バタバタと仕事をこなし、メールの返信を書いたりしているとすぐに時間がたってしまう。
この一ヶ月はもう古典の音楽からはなれてしまっていたので、疲れ果ててしまった。久しぶりにマーラーの交響曲第一番を聞く。ブルーノ・ワルターの指揮するステレオ盤の方。なんて安らぎに満ちた音楽なのだろう。
しかし、この曲はベートーヴェンの第9のパロディでもある。冒頭はまったく第九の第一楽章そのものではないか。ある時聞きながらふと気がついたのだが、全てが第九の裏返しなのだ。そのテーマの多くが「子どもの魔法の笛」からとられていることはよく知られているが、マーラーの最初の本格的な交響作品が、ベートーヴェンへのオマージュであったとは面白いものだ。「巨人」はその背後にある者を指していたのだろうか。
ブルーノ・ワルターの指揮は全てにおいて素晴らしいものだ。こんなに上手くていいのだろうか?微妙なテンポの変化はあくまで自然で、どこまでも伸びやかだ。録音も当時としては大変良い。
この曲の演奏では最初に聞いたエーリヒ・ラインスドルフ指揮ボストン交響楽団の演奏が今もどこかに残っているが、あのちょっと素っ気ない演奏からすると、この演奏のなんと歌に満ちていることか!!
第2楽章のレントラーのリズムの粗野にならない程度に野趣あふれる表現は、女性的などと言うワルターへの言われ無き偏見を見事に打ち砕くものだ。
第3楽章のアイロニーに満ちた表現は、どうだろう。フランスの子どもの歌を短調にして葬送の音楽にするというのは、マーラーがその初期から精神的に引き裂かれていたことを物語っている。平和で優しい野辺の風景は、一転、彩色が反転し、異様な世界に聞く者をつれていってしまう。
終楽章はベートーヴェンの第9の終楽章の冒頭の雪崩うつフォルテッシモがマーラーがどう料理したか興味津々といった具合だが、ベートーヴェンに比べると随分アニメ調に感じてしまう。
しかし、このワルターの演奏は文句なしだ。微妙なテンポの変化がそれと知られず行われ、旋律の性格をサラリと強調して聞かせる。これはもう名人芸の技と言えよう。私のようにヘボの指揮と比べてはいけないのだろうが・・・こんなことは私には逆立ちしても無理なようだ。
私はバーンスタインの旧盤も好きだったが、やはりこのワルター盤につきるのかも知れない。これを聞いたあとでは、なかなか他の指揮者で満足できなくなってしまうのが困ったものであるが・・・。このような歴史的名盤を今更「特薦」ですなどと言うのもはばかられるようなことだが、無印では失礼でもある。だから当然 *****(特薦)です。

SONY Classical/SM2K 64 447
by Schweizer_Musik | 2005-05-27 23:34 | CD試聴記
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