ジャン・フルネが引退したそうだ。もう大変な高齢ゆえ、当然なのかも知れないが、日本フィルとの長い関係を通じて、素晴らしい名演を数多く残してくださった彼の功績は計り知れない。
ある時、日フィルの関係者の方と話していて、フルネが振ると本当にあたりの空気が変わるとおっしゃっていたことを思い出す。デンオンなどにいくつかの手兵のオランダ放送フィルハーモニーとの録音があるが、このイベールはそうした一枚。 「寄港地」はミュンシュの演奏がお好みなのだが、多少のんびりしたというか、ふわりと力の抜けたこの演奏もまた良かった。いやそれよりも、このCDにはデュリュフレの3つの舞曲が入っているのだ。これの素晴らしさといったら・・・。なんて美しいのだろう。オーケストレーションも見事。何と言うこともないフランスの近代の音楽。でもあの美しいレクイエムの作者ならではの表現がそこかしこに込められていて、まさに知られざる名作! フルネがこの曲の規範となるような美しい演奏を残してくれたことに、心から感謝せざるを得ない。 また、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」をマリウス・コンスタンが交響曲にしたものがおさめられている。ドビュッシーの音楽はあきらかにシンフォニックとは言い難く、ギリギリ「海」がそうだと言って良いのかも知れないが、この音楽をマリウス・コンスタンがどう料理したかがポイント。私は何とか大甘につけて及第点というところだと思う。やはり歌劇は歌劇だ。 しかし、どこにもフルネの音楽が息づいている。場合によってはトスカニーニばりに筋肉質の演奏にもなるが、このCDでは、優しいフルネの横顔に触れることができる。 長い間ご苦労様でした。感謝感謝です。 DENON/COCO-70716
by Schweizer_Musik
| 2005-06-06 17:08
| CD試聴記
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